ブドウ畑開墾60年、100年目指し丁寧にゆっくりと 「ココ・ファーム・ワイナリー」専務池上氏

 足利市の知的障害者支援施設「こころみ学園」の創設者である故川田昇(かわだのぼる)さんが、教え子たちと平均斜度38度の山の斜面を切り開いてブドウ畑を開墾してから今年で60年。園生たちが育てたブドウは隣接する「ココ・ファーム・ワイナリー」で良質のワインとなり、国際会議や飛行機の国際線で提供されるなど高い評価を得ている。川田さんの長女で同ワイナリー専務池上知恵子(いけがみちえこ)(67)さんにワイン造りへの思いや現状などを聞いた。

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 −今月から日本航空の国際線ファーストクラスに白ワイン「風のエチュード」が搭載された。これまでも同社やサミットなど、国際的な舞台で使われている。

 「ワイナリー名などを明かさないブラインドテイスティングで選んでいただいている。『福祉施設のワインだから』と買ってもらうのではなく、商品として良質のものを造ることが父のこだわりだった。それが認められてきたのだと思う」

 −中学校で障害児教育に携わっていた川田さんは、どんな思いでブドウ畑の開墾に取り組んだのか。

 「父は『障害があってかわいそう』と庇護(ひご)されるだけだった子どもたちに、厳しい自然の中で汗を流して働くことで、生きる力を身に付けさせようとした。それに就職が難しい子どもたちと一緒に、作業しながら暮らしていこうという考えもあった。1958年から賛同する教員や生徒たちと2年間かけて急斜面を切り開いた」

 −ワイナリー誕生までの経緯は。

 「69年に30人収容の『こころみ学園』が完成し、成人対象の知的障害者更生施設として認可された。80年に保護者らが出資し有限会社『ココ・ファーム・ワイナリー』を設立し、4年後に醸造認可が下りた。最初は1万2千本だった」

 −目指したいワインは。

 「コンクールへの出品を勧めてくれる人もいるが、園生には賞など意味がない。うちの発酵は野生酵母がほとんどで、その土地に合ったブドウを無理せず栽培している。それぞれのブドウがなりたいワインになってくれればいい。60年はワイン造りではまだまだ駆け出し。支えてくれる人たちに感謝し、とりあえず100年目指して、丁寧にゆっくり進んでいきたい」