三島由紀夫(みしまゆきお)の代表作に「金閣寺」がある。1950年に起きた金閣寺放火事件から題材を取った。寺の美にとりつかれた学僧が、放火するまでの経緯をつづっていく物語だ▼ほかにも放火にまつわる物語に、井原西鶴(いはらさいかく)の「好色五人女」に取り上げられた「八百屋お七」がある。こちらも実話を基にしたとの説が有力。破滅的な結果をもたらす放火は、大作家の創作意欲に火を付けるようだ▼作品上ならば、いくら繰り返されてもいいが、現実に起こされては、こんなに危険で迷惑な犯罪もないだろう。ところが実態は、放火が本県の出火原因のトップを占め続けている▼2017年の統計を見ると「放火、放火の疑い」は87件に上り第1位。「たき火」や「たばこ」よりも多い。18年も同様の傾向が続く▼放火魔の心の闇を消し去るのは難しい。だから自衛策の強化が重要になる。県消防防災課によれば、家の周りに灯油のタンクを置かない、ごみを放置しない、といったことを徹底するだけで効果があるという▼寒さと乾燥が一段と厳しくなるこれから3月までが、1年で最も火災が多発する時期という。あす6日は宇都宮市で消防出初め式がある。見応えたっぷりの妙技が披露されるはしご乗りや分列行進などその勇姿をたたえつつ、一人一人が「火の用心」の心構えを新たにしたい。