地域、企業との協働推進

 

 自治医科大学は1972年、医療に恵まれないへき地における医療の確保・向上と地域住民の健康増進を図る目的で設立された。その後、大学のかたちは時代の変化や社会の要請に応じて進化し続けている。歴代の学長が掲げた理念も設立当初の「へき地医療を担う」から「総合医として成長せよ」へ、そして現学長はその全てを包括する「地域社会のリーダーたれ」を打ち出している。

 「地域を支える良き医療は、地域の人たち、文化や歴史を踏まえなければ行えません。江戸時代には医師が地域のまとめ役を務めていました。そうした役割を求められる本学の学生は、コミュニケーション能力や物事を俯(ふ)瞰(かん)したり横断的に見られる力、歴史や文化を理解できる能力を高めていかなければなりません」。専門の医療にとどまらず、幅広い教養、人間力を養成するリベラルアーツの必要性を強調する。

 「地域貢献」と並ぶもう一つのキーワードが「産学連携」だ。同大は昨年、学内に「オープンイノベーションセンター」を設置、企業との連携を通じて研究成果を社会実装するための基盤となる組織を創設した。

 「昔は大学が一つの企業と結びついた形が主流でしたが、これからの研究はさまざまな企業との協働が不可欠です。研究が社会から遊離したものにならないよう、社会と一緒になって進めることも重要になります」と、オープンイノベーションの意義を語る。

 こうした研究が実を結び、その成果を社会に還元していく過程では、インフラ整備や組織、人材の育成、特許の問題など、乗り越えなければならないさまざまな課題があるという。

 「まだよちよち歩きではありますが、大学として新たな取り組みを始めています。医療は社会と密接に関わっていますから倫理の問題が起きないよう倫理教育を徹底しつつ、地域と一体となった研究活動に力を入れていきたいと考えています」