「医療的ケア」必要な子に支援を 保育園など通えず、栃木県は新年度に予算計上へ

 医療の進歩で、気管切開や胃ろうによってたんの吸引や経管栄養の管理などの「医療的ケア」を必要とする子どもが増えている。県によると、6歳以下だけで県内に154人。県は新年度当初予算案に支援事業費を計上し、短期入所施設の整備などを図る方針だ。一方でこのうち保育園に通うのは宇都宮、大田原両市の5人だけ。受け入れる園がほとんどないためで、多くは保護者が付きっきりで子育てに当たっている。

 宇都宮市下岡本町の私立保育園「つながるほいくえん釜井台」。園児の岡田拓海(おかだたくみ)君(5)は迎えに来た母絵莉香(えりか)さん(34)に駆け寄り、描いた飛行機を自慢げに見せた。気管切開しているので声を出すのは難しいが、走り回ったり、けんかしたりと元気いっぱいだ。

 拓海君は双子の弟と超低体重児として生まれた。生後4カ月で気管切開し、1時間に1回程度たん吸引が必要となった。

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 育児休業を取得していた絵莉香さんは兄弟が生後7カ月の頃、職場復帰に向けて同市に保育園入園を問い合わせた。しかし回答は冷たかった。「前例がないので受け入れはできない。自分で探してください」

 衝撃を受けたが、逆に奮起し約3カ月で20以上の園に当たった末、つながるほいくえん釜井台にたどり着いた。「『社会から切り捨てられた』と思った」。絵莉香さんは振り返る。

 山崎英明(やまざきひであき)園長(48)は「誰かが支援しないと」と手探りで態勢を整えた。看護師の雇用、保育士のたん吸引研修の受講、リスクへの対応…。行政の支援がないまま2016年4月、拓海君は弟とそろって入園を迎えることができた。

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 医療的ケアが必要な子は、重い障害があって寝たきりの子から拓海君のような子まで、その状態は十人十色。拓海君は身体障害者手帳や療育手帳を持っておらず、障害福祉の支援がない。一方で受け入れる保育園もなく、公的な福祉のはざまに陥っていた。

 同市保育課によると、市内の保育園に通う医療的ケアが必要な子は現在4人。拓海君は初のケースだった。同課は「受け入れは保育園の自助努力に依存している」と明かす。