1941年の12月8日(日本時間)に米ハワイ・真珠湾を攻撃した旧日本軍の機動部隊は出撃前、千島列島・択捉島の単冠湾(ひとかっぷわん)に極秘に集結した。部隊は冬場に航行する船が少なく敵に察知されにくい北方航路を選び、ハワイに向かう▼旧日本軍が利用したこの地域はロシアにとっても軍事的要衝だ。オホーツク海に展開する艦船が太平洋に出て行くには千島列島、北方領土の海域を通らなければならない。その重要性は今も変わらない▼第2次大戦末期には米ソ間の激しい駆け引きもあった。ジャーナリスト若宮啓文(わかみやよしぶみ)氏の「北方領土問題の内幕」によれば、ソ連の最高指導者スターリンはトルーマン米大統領に「北海道の北半分」を要求。トルーマンはこれを拒否する一方、千島列島に米軍基地を置くのを認めるよう主張した▼安倍晋三(あべしんぞう)首相はロシアとの平和条約締結交渉を急ぐ。ただロシアのプーチン大統領は、日本に引き渡した島に日米安全保障条約が適用されることへの懸念を強調。ロシアの要衝に米軍が展開するのではないかという警戒だろう▼懸念払拭(ふっしょく)のため、安倍首相は北方領土の非軍事化を検討する。だが島が返還されれば日米安保が適用されるのが条約の仕組みだ▼非軍事化を米国が了解するのか。ロシアは信用するのか。領土交渉には米ロが絡む軍事問題が重く横たわる。