本尊の光背に残された「文政四年」「宇都宮明神前 大仏師法橋家 高田運秀」の銘文と青龍寺住職=19日午後、大田原市湯津上

 大田原市湯津上の威徳院極楽寺で、1871(明治4)年の火災で焼失したとされていた本尊、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)像が実際には焼けずに現存していたことが29日までに分かった。江戸後期の21(文政4)年に宇都宮の仏師が作ったとの銘文が本尊の修復に伴い確認された。県立博物館は「当時の本県仏師の活動を知る上で貴重な発見」としている。寺院は火災で全焼しており、青龍寺弘範(しょうりゅうじこうはん)住職(56)は「本尊だけは火から守ろうとした先人の思いが伝わる」と感激している。

 同寺院は1130(大治5)年の開基と伝わる古刹(こさつ)。湯津上村史によると、1871年11月の火災で建造物や古記録類などが「ことごとく焼失」した。このため、本尊は翌72年の本堂再建後に安置されたもの、と思われていた。

 2013年に老朽化と東日本大震災で傷んだ本堂の解体・再建が約140年ぶりに決まり、本尊の修復を北海道士別市の彫工廣田健治(ひろたけんじ)さん(53)に依頼。作業の過程で本尊(高さ65センチ)の光背(後光)の裏側に「文政四年 八月吉日 野州 宇都宮明神前 大仏師法橋家 高田運秀(たかだうんしゅう)」と墨で書かれた文字があることが分かった。