〈木がらしや目刺にのこる海のいろ〉(芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ))。「木枯らし1号」が東京地方で吹いたとの気象庁の発表がいまだにない。11月中になければ今年は見送りとなる。これも異常気象の表れか▼では本県はいつになるのかと待っていても、その日は永遠にやって来ない。発表は東京と近畿地方に限られているからだ。同じ季節風である「春一番」が全国各地で発表されるのとは事情が異なる▼木枯らし1号とは、東京地方では10月半ばから11月末までに西高東低の冬型の気圧配置で吹く、最大風速8メートル以上の北風を指す。県内で北風と言えば、日光の山々から吹き下ろす二荒おろし(男体おろし)や那須岳由来の那須おろしがよく知られている▼宇都宮高の応援歌に「二荒おろし」がある。〓(歌詞符号)二荒おろし吹きすさぶ戦雲巻くや瀧の原…。大正期に野球部を応援するために作られたというが、何とも勇ましい歌詞である▼この時季になると、県北地方の農家の軒先につるされた干し柿が、寒風にさらされる光景が目に浮かぶ。干し大根も同様に、冬の日差しと空っ風がじっくりと滋味を引き出していく▼童謡でも歌われているように、北風で連想されるのがたき火。子どもの頃にかじかんだ指先をじんわり温めてくれた落ち葉たきが懐かしい。暖冬傾向とはいえ冬は急ぎ足でやって来る。