「太平洋のシーザー」と呼ばれた男がいた。米元帥ダグラス・マッカーサー。太平洋戦争を指揮し英雄となった。終戦後は連合国軍最高司令官として占領下の日本に君臨。天皇をもしのぐ権勢が古代ローマの「帝王」になぞらえられた▼その男が1951年春、突然解任された。朝鮮戦争への対応を巡り、トルーマン大統領と対立したためだった。日本人は「帝王の上に立つ男」がいることを知った▼米大統領は行政府を束ね、世界最強の軍を指揮し、元首として国を代表する。人事権は特に強大だ▼トランプ大統領は中間選挙後、セッションズ司法長官を更迭し、その力を見せつけた。マティス国防長官らの更迭も視野に入れているとされる。閣僚人事は大統領の権限で、法的な瑕疵(かし)はない。問題は動機である▼司法長官はロシア疑惑の捜査を監督する立場にある。ロシアが米大統領選に介入したとされる疑惑だ。ところが、セッションズ氏自身がロシア側と接触していたことが発覚。疑惑の当事者となったため、捜査と距離を置いて中立を保った。これがトランプ氏の逆鱗(げきりん)に触れた。あるじを守っていないというわけである▼しかし、政治権力は民意のたまものだ。私利私欲のために使うのは乱用にほかならない。トランプ氏は一体、誰のために強大な権力を振りかざしているのだろう。