薄紫色の無数の花が、空から降り注いでいる-。
今年4月、足利市迫間(はさま)町の「あしかがフラワーパーク」で、見頃を迎えた樹齢約150年の大フジを取材したときの印象だ。
生命力あふれる大フジの姿をカメラのレンズ越しに見るのが惜しく、仕事なのを残念に思った。まるで命を咲かせているかのような圧倒的な存在感を、藤棚の下で心ゆくまで全身で感じていたい気分だった。
多くの人を魅了する大フジ。その歴史をたどると、1996年2月に起きた“奇跡の物語”がある。
1920年代、同市朝倉町の大地主、故早川和俊(はやかわかずとし)さんが庭の隅に植えたのがはじまり。近隣の人たちにも見てもらおうと、広大な庭を改良し、田園地帯の中に同パークの前身「早川農園」が誕生する。
しかし周囲の市街地化が進んだことなどから、移転の話が持ち上がり、大フジも他の樹木と一緒に現在地に移植されることに…