【さくら】氏家の歯科医師でチェロ奏者の西海栄一さん(58)が、趣味でチェロを作り続け、間もなく5作目が完成する。弦楽器作りの奥深さに魅せられ、診療の合間に打ち込み28年。演奏者から高い評価を得るまでになった。300年後はどんな音色を奏でているか−。ロマンをかき立てられながら、仕上げ作業に余念がない。
制作は「良い楽器が欲しいが、資金がない。ならば」と思い立った。国内のチェロ制作の第一人者尾崎幸夫さん(島根県)に師事。1作目は、尾崎さんの東京の工房に通いながら、7年かけ作り上げた。完成のたび脱力するが、時間がたつと再び意欲がわいてくるという。
制作の魅力は、科学で理論付けられず、作者の性格が表れることだ。材料の木を選び、手の感触を頼りに彫り進む。工具の一部は手作りする。約300年前に作られた名器ゴフリラをモデルに、毎回新たな発見がある。
西海さんから4作目を託された栃木県交響楽団チェロ奏者角田孝之さん(55)は「相当入れ込んで作ったのだろう。音が太く、素晴らしい。弾き込んでいきたい」と称賛する。
昨春から制作する5作目は、組み立てを終え、ニスを塗る段階。完成後は、助手役のチェロ奏者に貸与する予定だ。西海さんは「チェロは、楽器、弓、弦、弾く人の関係性で変化する度合いが違う。300年後どういう音を出しているのか。探求に終わりはない」と話し、早くも次作の構想を描き始めている。