白球はときに無情なドラマを生む。サヨナラで敗れた宇北のベンチには姉の3年生・菅野梨紗マネジャー、勝った宇工の三塁側スタンドには弟の1年生部員貴文がいた。
真工高教諭で元野球部長、元高野連理事の光広さん(45)を父に持つ2人。幼いころから野球は生活の一部だった。父に連れられ野球の試合を見続けた。その目に映ったのは、懸命にプレーする選手と陰で支えるマネジャーの姿だ。
「選手を支える仕事がしたかった」。宇北へ入学し、迷わずマネジャーとして野球部に入った梨紗。選手が笑顔で力いっぱいプレーする姿に幸せを感じた。
楽しげに野球の話をする梨紗の姿を見続けた貴文は、2年後に宇工に入学。姉同様、野球部の門をたたいた。
その姉弟が、くしくもまみえた3回戦。2人が見えるバックネット裏で「組み合わせのいたずらですよね。どちらにも頑張ってとしか言えない」と、光広さんは複雑な表情でつぶやいた。
父の思いをよそに、2人は「試合に姉弟は関係ない」と口をそろえ、梨紗は時にベンチで祈り、貴文はスタンドでメガホンを打ち鳴らした。
笑顔で選手を支え、選手と駆け抜けた梨紗の3年間。激闘13イニングス。あまりにも酷な幕切れに、瞳から大粒の涙があふれた。
「今はみんなにありがとうと言いたい。そして弟には絶対甲子園に行ってほしい」。いつもの姉の顔を見せると、ダッグアウト裏で思わず泣き崩れた。