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(4)「回復」 意思疎通 不十分なリハビリ体制

(2009年1月17日 05:00)

 明るい南向きの部屋。小山市中久喜の飯野潤さん(29)の自宅を訪ねると、ベッドの上から満面の笑みで迎えてくれた。

 言葉を話すことはできない。それでも表情、手の指先のサインなどでコミュニケーションを交わすことができる。

 一昨年十月から週一回、県内の医療機関に通院して続けているリハビリの成果という。その一カ月前、潤さんは約四年半に及ぶ入院生活から在宅療養に移った。

 リハビリの様子を聞いてみた。潤さんは右手を伸ばし、付き添う母親、八重子さん(55)の手のひらに指文字を書いた。

 「た、の、し、い」

 八重子さんは言う。「自宅に来てから、急に良くなってきたんです」

 二〇〇三年二月、通勤途中の交通事故で脳に外傷を負った。入院当時の診断は遷延性意識障害。それが最近の診断書には、こう書かれるようになった。「意思疎通が可能である」

   ◇   ◇

 潤さんが受けているのは作業、言語聴覚の各療法。補助されながら立位を取ったり、ホワイトボードに文字を書いたりする訓練を行っている。

 だが必要なリハビリを受けられない同障害者は少なくない。県内のある医療関係者は「(潤さんのように)外来でリハビリを受けられる医療機関が県内にどれだけあるか」と不十分なリハビリ医療体制を指摘する。

 さらに現在のリハビリ制度は原則、診療報酬が支払われる日数が疾患別に制限される。制限の適用外疾患もあるが、そこに「遷延性意識障害」の文字はない。

 ただ「頭部外傷」が挙げられており、例えば交通事故などを原因とする障害者は該当する可能性がある。だがそれは「治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合」が前提。つまり、地道なリハビリに回復の望みをかける同障害者は制度上、継続的なリハビリが受けにくい。

 「医療現場は個々の患者にとって必要か、という視点でやりたくても、制度上ないことはできない。診療報酬改定のたびに、リハビリ医療はたたかれてきた」。医療関係者は嘆く。

   ◇   ◇

 「この間も高校時代の恩師が訪ねてくれて、そしたら自分から手を出して握手したんですよ」。八重子さんは振り返る。

 潤さんは高校時代、ボクシングに明け暮れた。三年生の時にはモスキート級で全国高校総合体育大会(インターハイ)の頂点に。部屋には当時の写真やシューズを飾っている。ボクシングの恩師、仲間たちは今も時折、見舞ってくれる。「潤の財産ですよね」

 何度目かの取材の際、潤さんに当時の写真を届けた。社内の資料を調べたところ、試合の写真が見つかったからだ。

 写真を見ると、潤さんは笑顔をひときわ輝かせた。そして言葉の代わりに、誇らしげに右手でVサインを作って見せた。

 [写真説明]ベッド上の飯野潤さん。ボクシングで活躍した高校時代の写真を届けると、Vサインで応えた=小山市内の自宅

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