ヤマトシジミと言って何を思い浮かべるだろう。みそ汁好きなら貝、昆虫好きなら小型のチョウか。チョウの羽の形が貝のシジミに似ていることから、その名が付いた▼貝もチョウもあまたいるヤマトシジミと違って、チョウのシルビアシジミは絶滅危惧に分類される希少種である。関東ではさくら市近辺の鬼怒川沿いにだけ生息する▼なぜここまで追い詰められたのか。保護活動に取り組む「うじいえ自然に親しむ会」の会長加藤啓三(かとうけいぞう)さん(81)によれば、幼虫の唯一の餌となるミヤコグサが減り続けているからだ。外来種で繁殖力の強いシナダレスズメガヤに脅かされている▼同じく絶滅の危機にあり、鬼怒川河川敷に育つカワラノギクの強敵もこの外来種である。親しむ会は希少種のチョウと野菊を守ろうと年に何度も抜き取り作業に取り組み、種まきや育苗に励む▼「人の手を掛けなければ生きていけないか弱い存在です。後世に残していくためにも自分たちが頑張らなければ」と加藤さんは話す。その姿勢には頭が下がる▼東京書籍が2011年に発行した小学6年生向けの道徳の副読本には、加藤さんの思いや活動ぶりが載っている。そこに記された心配事は「会のメンバーの年齢が高いこと」。副読本で育った若者がもしも活動に賛同するならば、これぞ道徳の極みだろう。