一昔前の結婚式のスピーチでよく使われた言葉に「偕老同穴(かいろうどうけつ)」がある。夫婦がともに老いるまで仲むつまじく連れ添い、同じお墓に入る。中国の古典「詩経」が原典である▼彼岸に入り、仲の良かった両親が眠る墓に花を手向けた人も多いだろう。しかし、当世墓事情は様変わりしているようだ。小紙くらし面の昨年の連載企画「ハッピーエンディング 終活のすすめ」は興味深かった▼家族の形が変化し、さまざまな価値観が生まれ、少子高齢化の大波が洗う。お墓はそれを色濃く反映している。樹木葬は、家族に迷惑を掛けたくない人や身寄りがない人たちなどに選ばれている▼宇都宮市のお寺では174区画が半年ほどで完売したとある。「夫婦で同じ墓に入りたくない」という女性の申し込みもあったという。当然だが、どの夫婦も偕老同穴というわけにはいかない▼JA足利が昨年秋から始めた「お墓そうじ代行サービス付き定期預金」は面白い。500万円以上の貯金を新規で預けたり、相続で引き継いだりすると職員が墓参りと掃除を代行する▼問い合わせはあるが、今のところ契約はゼロ。足利市内にお墓を持つ人が対象なのに、市外からの問い合わせが多い。墓守に困っている人が少なくないことを示しているのだろうが、先祖に手を合わせる気持ちだけは失いたくない。