6人に1人の子どもが貧困の中で生きる現状を報道してきた下野新聞社「子どもの希望取材班」は23日、すべての子どもが希望を持ちながら大人になれるよう、五つの提言をまとめた。1月施行の子どもの貧困対策推進法がうたうように、生まれ育った環境に左右されず健やかに育つことは、子どもの当然の権利だ。貧困によって子どもが能力を発揮できないことは本人だけでなく、社会にとっても大きな損失となる。親だけが子育てを担い「貧困は親のせい」という自己責任論がある。社会や地域も担い手という意識に転換し、社会保障の負担増という「痛み」を覚悟しても、対策を進めるべきだ。


(1)見えにくい「子どもの貧困」、その存在の認識を

 「希望って何ですか」の連載中、読者から「現代にこんなに困窮する子がいるなんて」との声が多く寄せられた。

 困窮は、教育機会や自尊心などさまざまなものを損ない、次世代に連鎖していく。

 避けがたい理由で貧困状態にある世帯でも「努力が足りないから」といったレッテルを張られ、「貧しさを知られたくない」と孤立しがち。子どもが育つ権利を認識し、見えにくい貧困に目を向けよう。子どもの貧困の放置は、社会による虐待だと受け止めたい。

(2)発見、支援の最前線の充実を図れ

 子どもが過ごす時間の長い保育所や学校は早期支援の最前線。学校を基点に親の就労など福祉的支援につなぐスクールソーシャルワーカーの拡充が求められる。

 各市町は要保護児童対策地域協議会を活用し、「虐待」だけでなく、それ以前に「貧困状態にないか」という目線で、支援の対象児童を広げ、すくい上げることが重要になる。

 自治体にとって、民間の力を活用し衣食住を支援する「居場所」の整備は急務。日光市では居場所が実効性のある支援の場として定着したことで、子どもの情報が掘り起こされ、支援につながるようになっている。

 困窮家庭はSOSを出すことが難しい。「待ち」の姿勢ではなく、寄り添う支援が欠かせない。

(3)教育費の負担を軽減し、学ぶ意欲を支えよう

 本紙調査で県内の生活保護受給世帯の子どもの高校進学率は84%で、全体を15ポイント下回った。

 高卒が当たり前といえる時代。望む子すべてが高校までは進学、卒業できる体制を確立する必要がある。

 そのための方策は二つ。

 塾に行けない、進学先が限られる…。貧困によって、子どもはあきらめ、学ぶ意欲をも奪われる。高校進学に向けて全市町で学習支援を行うことは不可欠。

 二つ目は、就学援助の市町格差是正と、給付型、無利子の奨学金などの拡充のほか、各制度の周知、柔軟な運用の徹底だ。「子どもへの支援は未来への投資」と捉えることが前提になる。

 先進諸国に比べ、政府の公的支出に占める割合の低い教育支出について拡大の方向で議論が必須だ。

(4)現金給付の拡充による所得保障は急務

 子どものいる貧困世帯の中でも、ワーキングプア(働く貧困層)世帯の状況は深刻だ。国民から税金などを集め、手当などとして配る社会保障。本来、格差を是正するはずが、分配後に貧困率が悪化する「逆転現象」がある。まず解消しなければならない。

 このため児童扶養手当や児童手当の拡充のほか、働くほど一定水準までは所得が増え労働意欲につながる「給付付き税額控除」などの施策も選択肢になる。

(5)政治や自治体のリーダーシップ発揮を

 英国では1999年、当時のトニー・ブレア首相が「われわれの世代で子どもの貧困をなくす」と宣言したことで、対策が一気に動きだした。東京・荒川区でも区長がリードしている。

 読者から「困窮家庭を支援したい」という反応が相次いだ。社会に潜在的な支援の力があることは明らか。リーダーシップによって、官民一体の支援体制をつくるべきだ。