奨学金は子どもの学びへの希望をかなえ、進学を実現させる切り札の一つだ。貧困の世代間連鎖を断ち切ることにもつながるが、返済義務のある貸与型やその利用者は急増し、卒業後の「借金」として足かせになりかねない。現状や課題、制度の在り方を探る。(子どもの希望取材班)

奨学金制度の充実などを訴えたデモ行進=2013年12月、東京都内

 最大で627万円。

 「額を見ると、うわって思う」。県南の私立大3年奥山未菜おくやまみなさん(21)が、奨学金を返済する総額だ。返済期間は約20年にも及ぶ。

 「ちゃんと就職できれば、返せると思うけど…」。就職先は決まっていないが、返済だけは決まっている。

 奨学金月9万円のうち、4万円は「あしなが育英会」の無利子奨学金。5万円は日本学生支援機構からで、利子がある。

 高校時代を含め、大学卒業までに借りる元金は計560万円。返済額は利子で膨らむ。

 幼いころ父を亡くした。母はパート収入と遺族年金で家計をやりくりしている。生活は厳しいが、大学進学に賛成してくれた。

 奨学金は年約100万円の授業料に使う。大田原市の実家より大学に近い祖父母宅に下宿。アルバイトをして通学費や教科書代を賄っている。

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 「借りないと行けない」。そんな大学生が増えている。

 同機構などによると、進学率上昇と景気低迷による家計収入減が相まって、奨学金を利用する大学生の割合は1998年度の24%から2010年度の51%に倍増。2人に1人を占めるまでになった。

 年間授業料は1985年からの20年で国立大が2倍の53万円、私立大が平均で1・8倍の84万円超に増えた。

 大学進学率は10年度、過去最高の54%を記録している。

 奨学金問題対策全国会議事務局長の岩重佳治いわしげよしはる弁護士(東京)は「学費が低く大学に進学しない人が多かった時代とは違う」と指摘。

 非正規雇用が増える中、若者は少しでも安定した職を目指し大学に進学するだけに「奨学金という『借金』に頼らざるを得ない状況に追い込まれている」と分析している。