虐待を受けたり、養育が難しい家庭の子どもなどへの支援策を検討する県内全25市町の要保護児童対策地域協議会(要対協)などに関する下野新聞社のアンケートでは、対象となった子どもと妊婦の総数が、2013年度までの5年間で1.5倍の約3千人に増えたことが分かった。対象を広げる傾向がくっきりと表れている。経済的困窮が背景にあることが多い中、衣食住の直接支援は限定的で訪問・面談や見守りが支援の軸になっているほか、各市町が親との関係づくりなどに苦悩する姿も浮かび上がった。アンケートは4月下旬に行った。

 (子どもの希望取材班)

総数

法改正機に幅広く把握 衣食住にも目向けられ

 県内の要対協で対象となった子どもと妊婦の総数は市町ごとにばらつきはあるものの、児童福祉法改正などを契機に、対象を幅広く把握する動きが反映された。

 総人数は、2009年度の1972人から徐々に増えて、13年度は3035人となり3千人を突破した。13年度の18歳未満人口1千人当たりの人数は、県全体で約9・6人。

 対象は、各市町に要対協が設置された05年度は虐待を受けている「要保護児童」のみだったが、法改正に伴い09年度から保護者による養育が難しいなどの「要支援児童」、出産後に育児支援が必要な「特定妊婦」にまで拡大された。

 人数は全25市町のうち、16市町で5年前より増加している。日光市は09年度の51人から、13年度に約7倍となる349人に増え、鹿沼市も71人から、5倍超の399人となった。市貝、芳賀両町はともに4倍超。栃木、上三川両市町はほぼ3倍に増加した。

 増加した人数の多くは、支援によって状況が要保護から改善されたケースも含め、法改正で対象に加えられた要支援に該当する子どもとみられる。13年度で見ると、県全体で要保護が5割、要支援が4割、特定妊婦が1割程度。

 対象となった子どもには生活困窮家庭で、衣食住が行き届かず、直接的な支援を必要とする場合が少なくない。各市町や児童相談所(児相)に寄せられる児童虐待相談で最も多い分類は、ここ10年間ほどで「身体的虐待」から「育児放棄(ネグレクト)」「心理的虐待」へと変化している。

 県中央児相の鈴木友之(すずきともゆき)所長は「虐待防止の啓発が進み、傷やあざばかりでなく、衣食住、心の部分にまで社会の目が向けられるようになってきた」と指摘。「それに伴い、各市町の要対協が扱うケースが増えている」とみている。

市町

保護者との関係苦慮 制度利用に試行錯誤

 生活に困窮する家庭の支援をめぐる課題を尋ねた自由記述では、保護者との関係づくりや制度とのミスマッチなどに直面した各市町が、苦悩し、試行錯誤する姿が浮かんだ。

日光市の要保護児童対策地域協議会実務者会議。関係者が集い意見を交わした=4月中旬、同市内

 支援の入り口での「保護者との関わり方」を、課題として上げる市町が相次いだ。

 困窮家庭などでは、公共料金の支払いが滞ったり、部屋を片付けられずごみが室外にまであふれ近所から責められたりすることがある。こうした経験が積み重なり、心を閉ざしがちな保護者らも少なくない。

 那須烏山市は「方法を間違うと、親から拒否されてしまい、関われなくなってしまう」としたほか、塩谷町も「直接関わることで行政などとの関係が逆に悪化してしまう恐れがある時、対応に苦慮する」と回答した。

 足利市は「第三者と交わることや家に入れることを拒む親も多く、継続した支援が難しい」と指摘した。

 「支援制度と対象者をうまくつなげられない」とする悩みも多い。

 一定の所得があり、生活保護や児童扶養手当などの受給要件を満たさない世帯でも、借金や料金滞納などで実際は生活が困窮している場合も多い。高根沢町は「こうした家庭で暮らす子どもへの対応が課題」と受け止める。

 大田原市は「生活資金貸付や生活保護といった制度を紹介しながら支援しているが、病気や障害で働けないなど返済能力の問題で結びつけられず、困難を感じる」と説明した。

 一方、小山市は「支援に当たって、予算や人員の確保が課題」。佐野市は「福祉関係の業務が増える中、対応する専門職の職員数が不足している」と答えた。

方法

訪問・面談、見守り軸に 自治体で内容にばらつき

 生活困窮家庭で暮らす子どもへの支援として各市町が主に行っている方法は訪問・面談を通じた相談が最も多く、次いで学校や保育園などの関係機関を通じたモニタリング(見守り)となった。食事や入浴といった衣食住などに関する「直接支援」とした回答は12市町で、市町によっては支援の方法が限られている実態が浮かび上がる。

 アンケートでは、主な支援方法として(1)関係機関を通じた見守り(2)定期的な訪問・面談(3)家庭への電話(4)衣食住に関する直接支援(5)その他-の五つを上げ、各市町に件数が多いと思われる方法を三つ選んでもらった。

 訪問・面談は全市町が選び、学校などを通じた見守りも23市町が選択。13市町が家庭への電話と回答した。

 衣食住などに関する直接支援を選んだ12市町の大半は、家庭を訪問して家事・育児支援を行う。第三者を家の中に入れることを敬遠する家庭でも子どもを連れ出して直接支援する「居場所」の運営は日光市だけにとどまった。

 その他を選択したのは同市で、「親への就労支援」を挙げた。

 主たる支援を見守りや訪問・面談、電話とした真岡市は、課題として「利用できる制度があれば勧めているが、制度の対象とならない家族や子どもへの支援は、社会資源がないため限られている」と説明。

 ミルクの作り方を教えるといった主に乳幼児向けの育児支援を行っている上三川町も「食べ物などが底をついた家庭にすぐに支援できる物品やお金がない」などと現状を訴え、手だての少なさに頭を悩ませている。

経路

「日常的な場」が半数

 各市町の要対協がケースを把握した経路を県全体で集計すると、その割合は、「家族や親族による相談」と「学校・幼稚園・保育園」から、がともに約23%で、合わせて半数近くを占めた。

 日常的に子どもと接する人や長い時間を過ごす場所が、虐待を受けたり支援が必要な子どもを見つけることが多かった。

 次いで、「乳幼児・妊婦健診時」が約13%、「近隣住民」からが約12%、児童相談所が約10%となった。