内閣府の「子どもの貧困対策に関する検討会」。ここで出た学生や有識者らの意見を参考に、政府は7月中に大綱をまとめる=6月、東京・千代田区

 多くの自治体が直面する現実がある。

 第4章で取り上げた母子家庭の小中学生のきょうだい。小山市の古い農家で暮らす。

 子どもたちは食事を満足にできていない。窓ガラスは割れたまま。料金を払えず、電気を止められたこともある。

 窮状に気付いた民生委員だった女性(72)は、何度も市に相談した。

 でも、児童虐待には当たらない。公務員は担当業務が決められ、この家庭だけ特別に支援すれば不公平になる。

 民生委員、地区社会福祉協議会も一時的には支援したが、十分な手を差し伸べられなかった。

 この現実を乗り越えるには、政治や自治体のリーダーシップが不可欠だ。

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 第6章で取材した英国。「われわれの世代で子どもの貧困をなくす」。1999年、当時のトニー・ブレア首相が宣言してから、英国の対策は一気に加速した。

 子どもの貧困をめぐる民間団体の研究や運動にも火を付け、官民一体の取り組みが盛り上がる。

 10年あまりで子どもの貧困率は27%から10ポイント下がり、110万人の子が貧困から抜け出した。

 東京・荒川区では西川太一郎にしかわたいいちろう区長が先導した。

 会計など一見、子どもの貧困と関係のない部も含めて、すべての部長による「子どもの貧困・社会排除問題対策本部」を設置。貧困への意識を共有することで、行政の縦割りを越えていく。

 地域などから区への児童虐待相談は急増した。背後に貧困があることが多い。担当者は「虐待自体が増えたのではなく、住民の意識が高まった」。

 「官」のリーダーシップは「民」を巻き込み、一体となって支援体制が充実されていく。

 市とNPO法人が補い合い支援体制をつくる日光市。

 関係機関からの情報が集まる市は制度につなぎ、NPO法人は衣食住まで機動的に支援する。相乗効果は大きい。

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 「お金や食べ物を渡したい」「学習支援のボランティアに協力できないか」

 連載中、読者から支援の申し出が、新聞社に相次いだ。

 「衣食住を支援する『居場所』を作りたいが、対象の子がどこにいるか分からない」と悩む宇都宮市の女性もいた。

 行き場を見つけあぐねている「善意」。地域にあるこの力を生かさなければならない。

 子どもの貧困対策推進法に基づき、政府大綱が7月にまとまる。都道府県も対策のための計画を作るよう求められている。その中でどんな姿勢を示すのか。

 十分に手を差し伸べられない現実を放置できない。

 子どもが希望を持って育つ権利を守るために。

 (最終章終わり)