「ばらまき」という批判が強い現金給付だが、それでしか対応できないこともある。

 第5章で取材した県南の母子家庭。40代の母親は、月7万から10万円のパート収入とひとり親向けの児童扶養手当で生計を立てている。

 ワーキングプア(働く貧困層)世帯だ。

 家にエアコンやテレビ、固定電話はない。国民健康保険料など年額20万円近くを一括で払う。

 家賃などが滞ったり、子どもの部活の出費に窮する貧困家庭も多い。

 子ども向けの物やサービスの提供だけでは、生活の多様なニーズに応えられない現実だ。

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 非正規雇用の急拡大によって増えたワーキングプア。

 「一定の給付水準にある生活保護制度と比べて、ワーキングプアへの支援は乏しい。雇用や家族の形の変化に、社会保障制度が追いついていない」と中央大の宮本太郎みやもとたろう教授は言う。

 生活保護の「外」の支援はあまりにも手薄だ。こぼれ落ちるワーキングプアが支援を最も拡充すべきターゲットになる。

 「母子家庭 就労8割・貧困5割」。第5章のタイトルは、それを強調している。

 こうした母子家庭が社会保障の「逆転現象」にさらされている。

 国民から税金などを集め、手当などとして配る社会保障。格差是正につながるはずなのに、日本では分配後にむしろ子どもの貧困率が悪化する。

 矛盾を解消するための手段が現金給付だ。

 「既存の児童手当を拡充し、低所得や貧困の影響を受けやすい未就学児がいる世帯を手厚くする、という方策もある」

母子家庭あてに届いた読者からの励ましの手紙。封筒には母と子それぞれへの支援金も入っていた。一家はこの手紙とお金を「お守り」として大事にしている=県央

 国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩あべあや部長は、ばらまき批判を踏まえ「高所得者からは、その分、税金や社会保険料を徴収すればいい」。

 児童扶養手当の拡充や、働くほど一定水準までは収入が増え就労意欲につながる「給付付き税額控除」も選択肢だ。

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 子どもの貧困対策には、お金がいる。だが国財政は厳しく「痛み」を覚悟する必要がある。

 3月、新聞社に「第2章で紹介された母子家庭に寄付して」と数万円が届いた。

 報道の公益性から、個別の橋渡しは控えているが、匿名なので返せない。県央の母親ひろみさん(39)に手渡した。

 「すごくありがたいし、正直欲しい。けど苦しいのはうちだけじゃない」とひろみさん。低額で子どもに学習支援する団体に寄付を申し出た。

 団体には「勇気を出して新聞に載ったのはひろみさんだから」と受け取ってもらえなかった。

 「お守り」として今も、居間にある。

 限られたお金を分け合う発想。「痛み」を覚悟することと重なった。