登校時間になり、一つずつ埋まっていく小学校のげた箱。子どもの貧困は見えにくいが、身近にある=23日午前、県央

 「お金がない」だけではない。

 子どもから進学の機会や自尊心までも奪う現代の貧困。6人に1人いると言われている。

 第2章「育つこと・生きること」で2月、県央の中学2年生だった祐汰ゆうた君を取り上げた。母子家庭の3人きょうだいの「お兄ちゃん」。

 母が仕事で家にいない夜に親代わりをする祐汰君も、本当は心細い。勉強が手に付かず、成績は下降線をたどる。でも塾に通うお金はない。学費がかさむ私立高への進学は無理。

 学ぶ意欲が揺らいでいった。

 「親がいなくても勉強はできる」という理屈を押し付けるのは酷だ。

 母子家庭の集まりで祐汰君と話していると、記者の子と同じ中学校と分かった。

 「身近にいるはず」と始めた取材。「いる」という実感が加わった。

 貧困の「見えにくさ」を突き付けられた。

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 第3章「重なる困難 差し伸べる手」で取材した、生活保護の母子家庭で暮らす県北の高1の兄と小5の妹。

 料金を支払えずに水道を止められた。家のトイレは使えず、妹は小1までオムツ。ごく基本的な生活習慣が身に付いていなかった。

 一家は孤立していた。

 兄妹を支援するNPO法人の畠山由美はたけやまゆみさん(53)が、家事が苦手な母親に支援を申し出ても拒まれ続けた。

 自らも生活保護家庭で育った母親。長い間、「努力が足りない」という世間の目にさらされてきた。「ずっと責められている気持ちで生きてきたんじゃないでしょうか」と畠山さん。

 第5章「母子家庭 就労8割・貧困5割」では、小2の娘のいる県南の40代女性が取材に応じてくれた。「なぜ離婚?」。問われること自体を責められていると感じ、職場には母子家庭であることも隠す。

 生活保護の受給にも、親戚らに扶養できるかの照会が必要になる。「貧しいと知られたくない」と申請をあきらめた。

 不名誉で逃れられない烙印(らくいん)や偏見を意味する「スティグマ」。それが社会や困窮する子の親自身にもある。

 だから、身近にあるのに見えてこない。

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 貧困の原因とは。

 第6章の取材。英国の子ども支援団体のティム・ニコラスさん(40)が訴えた。「もし親のせいなら、英国の子どもの貧困率が北欧より高いのは、英国の親の方が悪いからということになる」

 まして子どものせいではない。

 畠山さんから問い掛けられた言葉が耳に残る。

 「子どもの貧困を放置することは、社会による虐待だと思いませんか」

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 子どもの希望取材班の五つの提言は貧困の中にいる子どもの姿を追いかけることをベースとして、本人や親、支援者、識者らに事態改善の方策を尋ね続けた集大成だ。子どもの未来を見つめながら、議論を呼び掛けたい。