チルドレン・ノース・イーストのサラ・ブライソンさん(左)と代表者のジェレミー・クリップスさん。貧困地区の子どもたちが撮影した写真の展示会を2011年に企画した=5月13日、イングランド北東部、ニューカッスル

 英国の寒さは厳しい。

 「イート・オア・ヒート」。訳すと「食べるべきか、暖まるべきか」。

 経済的に困窮する家庭は選択を迫られる。

 「この冬、寒い家で過ごした子どもは190万人に上る」

 ロンドンに本部を置く子ども支援団体ザ・チルドレンズ・ソサエティは燃料費高騰を背景に調査結果をまとめた。

 英国には低所得世帯向けの暖房費の割引制度がある。受けられるはずなのに割引を知らない人は多く、手続きも煩雑だ。

 ところが、低所得の年金生活者は、自治体が本人に代わって手続きするため漏れはない。

 1月、ソサエティは「子どものいるすべての低所得世帯に暖房費の割引を」と求めて、キャンペーンを始めた。

 調査を行ったサム・ロイストンさん(30)は「公平性に関わる重要な問題です」と言う。

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 人生で成功する機会をすべての子が持てる「公正な社会」。

 賃金水準や福祉、住環境、子育て支援など社会の仕組みを改善することで「公正」を追求する意識は、子どもの貧困対策に取り組む人々に共通している。

 一方で、日本で根強い「子どもの貧困は親のせい」という自己責任論は英国にもある。

 「もしそうなら…」とチャイルド・ポバティ・アクション・グループのティム・ニコラスさん(40)は反論する。「英国の子どもの貧困率が北欧諸国より高いのは、英国の親が悪いからということになる」

 日本の子どもの貧困対策推進法も目指している。「子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現する」

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 子どもの貧困問題に直面し試行錯誤する英国。厳しい財政運営を迫られ、児童手当の削減など後退した政策もあるが、それでも歩みを止めない。

 イングランド北東部のニューカッスル。

 地元の子ども支援団体チルドレン・ノース・イーストは2011年、貧困地区で暮らす子どもたちが撮った写真の展示会を開いた。

 空っぽの冷蔵庫、靴底に開いた穴、ブランコの椅子がなくなった公園、ごみが散乱した道…。

 大人の目線になりがちな子どもの貧困対策。写真展を担当したサラ・ブライソンさん(35)は「子どもの目線で考えて」と訴える。

 制服が買えない、校外活動に参加できない、いじめられる…。子どもの声に耳を傾け、新しい事業を始めた。学校で子どもたちと、貧困について考え、どうすれば公正になるかを話し合う。

 「大人の意見よりも子ども自身の声を聴くことの方が、対策の力になるはずです」

 (第6章終わり)

 ◇ズーム◇ チャイルド・ポバティ・アクション・グループ(CPAG)

 英国の貧困研究者らによって、1965年に設立された非営利組織。子どもの貧困に関する調査研究を行い、それに基づき政策提言する。貧困家庭への相談支援や自治体への助言、相談・支援員らに対する研修も行う。子どもの貧困問題に取り組む民間団体の中心的存在。本部はロンドン。