「欠食も見られなくなり、学校への遅刻も減っているようです」

 4月中旬、日光市内。

 母子家庭で暮らす小学生の女の子の近況を、市の家庭児童相談室の相談員が説明した。

日光市要保護児童対策地域協議会の実務者会議。軽微な段階での支援を念頭に、対応する子どもの対象は広がっている=4月中旬、日光市

 市要保護児童対策地域協議会の実務者会議。要対協は、市関係課や警察、児童相談所などが、養育の難しい家庭の子どもの対応について意見を交わす。

 1年前の初夏。女の子は遅刻が目立ち、時折食事が取れていない様子だった。それを気に掛けた学校から、相談室に連絡があった。

 相談員が母親に事情を聞くと、両親が離婚し母親が夜働き出してから、女の子の生活は乱れがち。ひとり親家庭向けの児童扶養手当や昼間の仕事を紹介した。

 いまは女の子の状況が改善している、という報告だった。

 比較的軽いケースにまで要対協の対象を広げて、早い段階でのアプローチを心掛ける日光市。

 担当する市人権・男女共同参画課は打ち明ける。

 「虐待でないケースにも支援が必要という思いは、NPOと一緒に仕事をして出てきたものなんです」

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 市とともに相談室の相談業務を担うNPO法人「だいじょうぶ」は2005年度、児童虐待の電話相談窓口として発足した。

 虐待対応に奔走する理事長の畠山由美はたけやまゆみさん(53)はこんな思いを抱えていた。

 「虐待で一時保護が必要なほど深刻になる前に、何とかできないのだろうか」

 一口に育児放棄(ネグレクト)の虐待と言っても、その状況、程度はさまざま。線引きは難しい。

 でも、子どもの状態を見れば、窮地に立たされていることに変わりはない。多くのケースで経済的な困窮があることも感じていた。

 「虐待に当たるかどうかばかりを考えていても仕方がない。とにかく、困っている子どもを支援しよう」

 訪問する家事や育児の支援のほか、10年夏、子どもを連れ出し民家で衣食住をサポートする「居場所」もつくった。

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 家事の苦手な母親のもとで、入浴がままならない中学生の兄と小学生の妹がいた。「この子たちをお風呂に入れたい」。居場所は、そんな発想から生まれた。

 無気力で学力が低かった兄はことし春、希望を持って高校進学を果たした。

 4月下旬。二つ目の居場所を開設した。こんどは母子の宿泊機能もある。

 「早い段階での直接支援は、虐待の予防にも効果を発揮している」。市も手応えを感じている。

 「虐待されていないか」から、「貧困にさらされていないか」へ。子どもへの目線が変わりつつある。