秘密は守る。できる支援をとことんやる。

 そして、丁寧に学校と連絡を取る。

 大久保おおくぼみどりさん(64)が学校とかかわる上で心に決めていることだ。

 養育支援などを行う日光市のNPO法人「だいじょうぶ」スタッフで、市の家庭児童相談室相談員を兼ねている。小学校の元校長先生。

支援のため、小学生のきょうだいを迎えに来た元小学校長の大久保さん。学校との密な連携が信頼関係を深めている=4月下旬、日光市

 だいじょうぶの細やかな支援に携わり、こう感じるようになった。

 「子どもが困っている、という情報さえあれば、必ず支援ができる」

 小学生の女の子2人と赤ちゃん、両親で暮らす家庭。父親は高齢で、生活は外国人の母親が稼ぐ月9万円に頼っていた。

 冬、ストーブを使うのは居間だけ。余すところなく使う野菜から、ごみは出ない。そこまで切り詰めても、生活は苦しかった。

 給食費はずっと、払い続けてきた。日本語の字が読めない母親は、学校が文書で周知した就学援助制度を知らなかった。

 「援助対象の非課税世帯かどうかとか、学校は分からないから」。大久保さんは一家に食べ物を届けて、小学校に連絡した。

 すると、学校はすぐに、給食費などが援助されるよう手続きを整えた。

 学校との信頼関係がまた少し、深まった。

◇ ◇ ◇

 大久保さんが担当するある小学校は、だいじょうぶが衣食住を支援する居場所「Your placeひだまり」への下校班を設けている。

 男性校長(56)が言う。「事情を抱える子に学校だけで対応するのは無理。24時間かかわることは、できない」

 経済的な困窮から家庭が荒れ、トイレでの排せつすらできなかった小学生がいた。ひだまりで生活習慣を身に付け、いまは「普通の子」として登校している。

 「貧困の連鎖を断つという点で、ひだまりがもたらす効果は大きい」

 支援を受けて、子どもの状況が改善されることが分かっているから、学校から子どもを紹介することも珍しくなくなった。

◇ ◇ ◇

 「本当に変わってきている」と大久保さん。

 その学校の姿は、校長時代に情報を外に出すことをためらい、いまは支援に取り組む自分の姿に重なる。

 数字にも表れている。

 学校や家庭から市の相談室に寄せられた相談は2012年度、約8千件。だいじょうぶと市の相談室の情報共有が徹底された11年度から倍増し、さらに13年度は1万2千件を突破した。

 子どもに着実な支援を届ける受け皿が、ケースを掘り起こす好循環を生み出している。