築70年以上がたった小山市の古い農家。

 居間の傷んだ畳には直径20センチほどの焦げ跡がある。

 2013年8月。料金を滞納し電気が止められた。地下水をくみ上げるポンプも動かなくなり、水道は出ない。食べ物もなかった。

古い農家で暮らす子どもたち。畳には、ろうそくが倒れて焼けた跡が残る=4月下旬、小山市内

 中2の優也ゆうや君=仮名=は、小6の妹(12)と母(46)、祖母(75)と一夜を過ごした。

 暗い室内。ともしたろうそくが不意に倒れて、火が畳に燃え移る。焦げた臭いが立ちこめた。

 どう消したのか。動揺した優也君には記憶がない。

 父親はいない。母は生活に疲れ収入はわずか。家族4人の暮らしは祖母の生活保護に頼らざるを得なかった。

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 畳が焼ける数時間前。祖母は自分が通う市内の介護保険施設のケアマネジャーの女性(49)に、電話で助けを求めていた。

 ケアマネは市の地域包括支援センターへ連絡する。「子どもも満足に食べてないらしいんです」。センターは地区社会福祉協議会などに食料支援を頼んだ。

 翌日になると、地区社協の茂木俊雄もてぎとしおさん(66)らが駆け付け、緊急措置として電気代を立て替える。

 家の中では、5~6匹の猫がまな板の上から土間、庭を闊歩かっぽしている。ハエも飛び交っていた。

 土間の炊事場や風呂場は雨漏りで水浸し。排水口は汚れて、詰まっている。茂木さんらは泥まみれになりながら、詰まりを取り除いた。

 縁側サッシ戸のガラスが割れたまま、冬を越した。風呂場に扉はない。

 「子どもにとって、あまりにも厳しい環境」とケアマネ。でも、子どもの支援は業務ではない。

 茂木さんも「地区社協にできるのは一時的な支援」という。

 「子どもを連れ出すわけにはいかないし…」。民生委員だった女性(72)は、もどかしさを感じていた。

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 電気が止められる前から、市の家庭相談員らは何度か訪問し、学校とも連絡を取り合った。

 子どもたちに問題行動はない。食料支援もあり、最低限、食事はできている。「虐待」に当たれば、子どもを保護することもできるが、その段階にはない。

 「法律の範囲の中で対応している。それ以上のことは難しい」。市子育て・家庭支援課の河田博かわだひろし課長は、行政の限界を認める。この家にだけ特別な支援をしては不公平になってしまう。

 母親は仕事のシフトを増やし、働くようになった。でも優也君の家は電気料金を滞納しがち。雨漏りも修理できていない。

 一家の窮状にみんな気付いている。なのに、十分に手を差し伸べられなかった。

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 親から子への「貧困の連鎖」を断ち切るには、一刻も早く見つけ、支援につなげることが不可欠だ。しかし、さまざまな事情が絡み合い、いまの態勢は必ずしも十分とは言えない。行政や学校、地域に求められるものとは。第4章は、県内外の取り組みを追う。