リンゴ農家へは失礼を承知で打ち明けるが、矢板支局への配属が決まるまで、矢板市が県内有数のリンゴ産地とは知らなかった。

 着任後、農家を訪ねたり、ジュースや乾燥リンゴといった加工品をいくつも食したりして、“お近づき”になったつもりでいる。

 今月、直売所や道の駅やいたに旬のリンゴが並び始めた。生産者が手塩を懸け育てたリンゴは、みずみずしく甘い。シャキッとした歯応えは、これまで食べたリンゴと違った。

 25日、60年続く長井の渡辺りんご園を取材した際、代表の渡辺幸史(わたなべさちふみ)さん(59)から味の差を聞いた。光の浴びせ方を考えた枝切りや、実を覆う袋の有無などで味が変わるのだという。

 何げなく食べていたが、栽培の奥深さやリンゴに懸けるプロの熱意を感じた。

 同園では、長男幸一(こういち)さん(32)が後継者として作業の中心を担っている。しかし、20件ほどの市内リンゴ農家のうち若手がいるのはわずか数件の状況だ。県内有数の産地として、味の伝統が引き継がれることを願いたい。