「これが酒のうまさか」。14歳の時、こっそり、一口なめたワイン。その味と香りが、人生を動かす伏線となった。

 足利市島田町、増子敬公さん(65)。ラムネ製造会社「マルキョー」を経営する傍ら、ワイン醸造家として、これまでに10カ所のワイナリー立ち上げに携わってきた。

 高校時代は「どんな知識でもいいから得たい」と酒に関する本を読みあさった。東京農業大で醸造学を学び、山梨県の醸造試験所に勤務。その後、父親が創業した会社を継ぐため、地元に戻ったが、繁忙期以外は、ワインづくりの指導で全国各地を飛び回る。同市の「ココ・ファーム・ワイナリー」も手掛けた仕事の一つだ。

 その土地でできるブドウの種類や気候に合わせ、醸造方法を考える。酵母の種類や発酵時間、温度、アルコール度数などをさまざまに変え、味のバランスを調整。発酵温度は0・1度刻みで調節し、泡の立ち方なども細かにチェックする。「ワインは年に1度しかつくれない。一瞬も気は抜けません」

 2年前から、自社製造も始めた。奥深いワインの世界だが「初めて飲んだ日のように、単純においしいと思ってもらえるのが最高の喜び」。満面に笑みをたたえた。