「和文化」の伝統を継承

 年が改まると同時に、県内4店舗の人形専門店「鈴為」を営むスズタメの社長に就任。第15代当主として、324年もの歴史を持つ同社の未来を担うこととなった。

 「酉年生まれの年男、これを節目として代替わりすることになりました。先代が守ってきた企業を継続させなければいけないというプレッシャーは感じますが、肩書きが変わっても仕事自体に変化はありません。これまで同様に、人形一本に絞って伝統を守っていきます」と、その表情に力みはない。入社以来22年間、父の経営手腕を間近に見ながら、アパレル会社での経験を生かし、人形の衣の生地を担当。全国の産地を歩いて生地の段階から人形製作に関わってきた。

 父である鈴木賢一(すずきけんいち)氏(現会長)は、ユニークな発想と大胆な事業展開で知られる人物。社長就任後に「スズタメの本分は人形専門店」との思いを深めて好調だったスーパーマーケット事業からの撤退を決意し、ストーリーのある動線を用いて人形を展示する人形会館をオープンさせた。現在は馬場通りの本店のほか県内に三つの人形会館があり、ひな人形、五月人形、盆提灯、正月飾りの4商品を季節ごとに展開。各店舗それぞれ、雰囲気も商品構成もガラリと違う上、人形の約8割は同店のオリジナル商品だ。ひな人形だけでも約1千セットという品揃えは全国でも珍しく、全店舗を回って理想の人形を見つけるという顧客も少なくない。

 「節句に孫の成長を祝って人形を贈るという風習は、日本ならではの素晴らしい伝統です。時代とともに生活環境やライフスタイル、家族の構成や関係、心も変わってきています。その中でニーズを読みながら、伝統の良さを次代に伝えていくことが私たちの使命。ハロウインもいいですが、節句や正月に関する情報を発信し、盛り上げたいと思います」

 先代から受け継いだ和の伝統へのこだわりと卓越した先見性、行動力で、新たな時代を拓いていく。