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健康管理は企業の本業

とちぎ健康経営セミナー

 従業員の健康を重要な経営資源と考え、健康管理や増進に積極的に取り組む「健康経営」が多くの企業に広まっています。下野新聞社は本年度「とちぎ健康経営キャンペーン」を展開。その一環として10月25日、宇都宮市西原町のヴィラ・デ・マリアージュ宇都宮で第2回の「とちぎ健康経営セミナー」を開催しました。講師に、2年連続で健康経営に積極的に取り組む「健康経営銘柄」に選定されている東燃ゼネラル石油株式会社代表取締役社長の武藤潤氏らに、経営者の心構えと具体的な取り組みなどについて講演してもらいました。会場には県内の企業・事業所の経営者、総務・労務担当者ら約50人が参加し、健康経営の求められる背景とそのメリット、さらには新しく始まる認定制度について関心を寄せていました。

(企画・制作 下野新聞社営業局)

命守る経営者の「覚悟」必要

東燃ゼネラルグループにおける健康経営

東燃ゼネラル石油(株)代表取締役社長 武藤 潤

 誰もが健康はあって当たり前で、無いと困りますね。一方、事業を進める上では安全が重要です。安全を確保することは「短期的な危機」つまり火事を防ぐためなど見えやすいのですが、健康を維持していくことは「長期的な危機」であって見えにくいものです。たばこを吸い続ければ健康を害すると、分かっているけどやめられないというのが健康の危機の特徴です。

 健康経営といっても「何をしたらよいのか」ピンと来ない方も多いかもしれませんが、気持ちよく働ける環境があって、従業員は初めて生産活動ができるわけですから、まずは従業員の健康管理は企業活動の根幹と捉えることが大事です。

 健康を害するような職場の因子には、その害を排除する対策が必要で、残業の問題が顕著な例です。私も過去に残業し徹夜したこともあります。本日中に何としても仕上げねばならない業務もありました。でも長くは続きませんし生産性は落ちる一方。ワークライフバランスの浸透を図り、しっかり休んで、心身共に健康な状態で業務を遂行することが大事です。

 また上司と部下のコミュニケーションは非常に大事です。上司の指示どおりに、部下が仕事をこなすだけでは「いやいや」仕事をする状態になり、ストレスの源にもなります。そうした状態では「言われた事だけやる」、もっと言えば「言われなかったらやらない」となってしまう。これでは困るんです。自ら進んで業務を遂行できる関係構築、その仕事を自分が受ける動機付けができるように仕向けることが上司には求められます。これはメンタルヘルスの観点からも非常に重要です。

 経営者の役割については、健康経営を進める上で当然ゴールの設定は必要ですし、それなりのリソース(ヒト・モノ・カネ)も必要です。従業員の健康は「二の次だ」と言う経営者はいないでしょう。でもやはり経営が厳しい、コストが掛かるなどあると思いますが、そこは本音と建前を一致させて有言実行する努力が必要なのです。何度も言いますが健康は見えにくい。結果が見えにくいまま資源を投資するわけですから本当に健康経営に意味があるのかと思うでしょうが、しっかりとリスクアセスメントを行って、とことん危険因子を排除し、PDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクト)のサイクルを回しながら、健康経営の進捗(しんちょく)を「見える化」していくことも大事です。

 業務も、一人一人の健康管理も、やらされるのでなく自発的に取り組める環境づくりが肝心です。経営者にとって業務管理は大事な仕事ですが、従業員の健康管理はそれ以上に会社の本業です。健康対策は決してコストではありません。必要な費用ですし、かけがえのないものを守っていることに間違いはありません。皆さんもぜひ、情熱を持って従業員の幸せと、企業の発展のため健康経営にまい進してください。

むとう・じゅん 鹿沼市出身。宇都宮高校、横浜国立大学工学部を経てゼネラル石油に入社。2012年6月より現職。

企業の努力を「見える化」

「健康経営」の推進に向けて

経済産業省関東経済産業局地域経済部次世代産業課長門田 靖

 日本では少子高齢化が進展する中、高齢者の人口比率の拡大などの影響により、医療費の抑制にも苦慮しています。そうした中、現役世代のうちから積極的に健康増進や早期診断・早期治療などに取り組むことで、生活習慣病対策や平均寿命と健康寿命のギャップを埋めていくためのセルフメディケーションが重要になってきています。そうした流れで、健康経営が必要とされてきています。

 まだ健康経営という言葉はあまり浸透していません。アクサ生命のアンケートによると、中小企業の経営者の中で知っていた方は全体の1割でした。しかし「健康経営に取り組みたい・興味がある」と答えた方は7割に上り、社員のモチベーションと生産性の向上など目的意識も明解でした。「では何をすれば良いのか」という疑問は多く、そこで経産省では先進的な健康経営の取り組み事例集や、東京商工会議所との連携で「健康経営アドバイザー」の認定制度を設けて、各企業に派遣する取り組みも始めています。また各企業の経営者に対し、健康経営をするためのインセンティブ(動機付け)にも取り組んでいます。

 すでに平成26年度から東京証券取引所などの協力で、健康経営に顕著な取り組みを進める上場企業を「健康経営銘柄」として選定し、昨年度も東燃ゼネラル石油をはじめ25社を選定しています。さらには今年11月から中小企業にも顕彰制度を拡大し、非上場企業の大企業を含め「健康経営優良法人認定制度」を始めます。要するに従業員の健康維持に取り組む企業の努力を見える化していきたいということです。

 こうした制度は国だけでなく、栃木でも足利銀行と協会けんぽ栃木支部の連携により「健康経営応援ローン」が始まっており、全国でさまざまなインセンティブ制度の裾野が広がっています。

幸福見据え まず対話から

みんなが健康でシアワセになる働き方

フェードイン代表取締役 工藤敬子

 私は昨年ワークライフバランス(WLB)のコンサルタントとして県内10社、本年度は「埼玉版ウーマノミクスプロジェクト」にも関わっています。またWLBの第一人者である小室淑恵(こむろよしえ)氏の加盟コンサルタントとして活動しています。

 健康経営を進める上で、長時間労働をやめることなしには語れません。日本には勤労に対する美徳があるため自分を犠牲にしてでも頑張ってしまいます。しかし、それが評価される時代は終わりました。高度成長期は「人口ボーナス期」でしたが、現在は支えられる人が支える人を上回る「人口オーナス期」に入り、20年が過ぎました。少ない労働人口で高い成果を上げねばならない時代にふさわしい労働は、女性の活躍がますます期待される知的な労働です。こうした時代の変化に経営トップの方々の頭の切り替えがなければ働き方改革も不可能でしょう。

 各企業の職場の課題を見れば、団塊世代ジュニアと呼ばれる40歳代の従業員が一斉に「介護」に入っていきます。さらに晩婚化に伴い子育てと介護のダブルケアという課題も深刻です。私どもが企業のコンサルに入る際、まずは現状把握、そして経営者に健康経営を「こういう方針でやるんだ」というコミットを明確にしてもらい、時間を意識した働き方へシフトするために見える化を進めます。さらに長時間労働を是とする経営・管理職の意識改革に着手します。中でも「この人にしかできない、分からない」といった属人的業務を全て排除します。

 これらに着手しなければ新たな取り組みはできません。働き方改革によって生じた時間は家庭に還元し、従業員の満足度、幸福感もアップさせ、企業の業績アップにもつなげる。こうしたシナジー(相乗効果)を生み出すことこそがWLBの本来の意義なのです。まずは、どんな取り組みが従業員の幸福につながるか、話し合うことが健康経営への一番の近道だと思います。