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日本の成長戦略にも必須

とちぎ健康経営セミナー

 従業員の健康を重要な経営資源と考え、健康管理や増進に積極的に取り組む「健康経営」が多くの企業に広まっています。下野新聞社は本年度「とちぎ健康経営キャンペーン」を展開。その一環として9月6日、宇都宮市野沢町のパルティとちぎ男女共同参画センターで「とちぎ健康経営セミナー」を開催しました。講師に健康経営を推進する経済産業省関東経済産業局次世代産業課総括係長の和田宗介氏らを迎え、今秋から本格運用される中小企業向けの「健康経営優良法人認定制度」などの概要などについての解説と各分野からの講演を頂きました。会場には県内の企業・事業所の経営者、総務・労務担当者ら約100人が参加し、健康経営の求められる背景とそのメリット、さらには新しく始まる認定制度について関心を寄せていました。

(企画・制作 下野新聞社営業局)

トップが理解、判断し実践

「健康経営」の推進に向けて

経済産業省関東経済産業局次世代産業課総括係長 和田宗介

 戦後、経済社会が発展する中で、平均寿命は50歳から80歳に延びました。およそ1世代分の新たな国民が出現している社会構造に対し、定年退職後の第2の人生を健康で生き抜き、生涯現役を前提とした経済システムの再構築が求められています。また医療費の適正化など社会保障費の増大といった観点からも健康経営は重要です。

 健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取り組みが、収益性を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することです。そこで重要なのは、トップとしてこれを理解し自らが進めていくことです。すでに「健康経営銘柄」などの大企業向けの認定制度が始まっており、今秋からは大企業とともに中小企業向けの「健康経営優良法人認定制度」を本格運用していきます。ともに選定基準のフレームワークには「経営理念・方針」「組織体制」「制度の施策実行」「評価・改善」「法令順守・リスクマネジメント」の五つを設定しています。産業界、医療界、自治体などの関係者でつくる「日本健康会議」の宣言の中では2020年までに、大企業等から健康経営に取り組む法人「健康経営優良法人500(ホワイト500)」を選定、中小企業等の中から健康宣言に取り組む法人を1万法人をつくるという宣言がされています。

 しかし実際、何から着手したらよいのかノウハウが分からないという声が聞かれますので現在、健康経営アドバイザーや、ハンドブックなどをつくり普及に努めています。また、経産省主催の説明会も各地で開催しており、関東では10月13日に東京都内で開催します。そこでは新制度についてさらに詳しく紹介します。

 従業員の健康は個人の問題でなく経営者にとっても人材の定着、確保といった点はもちろん、業績・パフォーマンスを上げていく上でも非常に重要です。労務災害やメンタルヘルスといった面も踏まえ、将来への投資という形で健康経営に取り組んでいただきたいと思います。

どの企業にも必要な改革

働き方改革について

栃木労働局雇用環境・均等室長 吉永佳代

 いまなぜ働き方改革が必要なのか。すでに多くのメディアなど各方面で取り上げられていますが、働き方改革は人口減少、女性の社会進出、介護離職といった日本の抱えるさまざまな課題を解決するためのキーワードの一つで、日本の成長戦略を考える上でも必須の課題です。経済の好循環実現に向けた政労使会議でもやはり働き方改革が挙がっています。

 人口減少および出生率の低下には、労働時間との相関関係があるといわれています。出生率向上を考える上で、女性だけの問題でなく、むしろ男性側の働き方の改革が重要です。家事・育児は、お母さんだけでは大変です。そのため2人目の出産をちゅうちょしてしまいます。これも出生率が伸びない要因の一つです。育児は男性・女性も当然担っていくべきですが、現状はやはり女性が多く責任を負っています。仕事と家庭の両立のためにも長時間労働の抑制が必要です。

 平成20年と26年の国内労働者の労働時間の推移を見ると総実労働時間は減っているものの、所定外労働時間(残業)は増えています。特に1カ月に80時間以上残業するという方の割合は全体で8.5%。政府としては、これを32年までには5%まで下げる目標を立てています。長時間労働の抑制のためには、ある一人に仕事が偏るといった点を改善しなければなりません。どの企業も人員は、ギリギリの線でやっている所が多く、何かあったときには、ある人が長時間労働で対応している現実があると思います。

 働き方改革のメリットは労働者の職務に対する満足度の向上、心身の健康リスクの低下、作業効率の高揚などがあります。従業員だけでなく、企業側にとっても大きなメリットとなります。本日は健康経営が大きなテーマですが、これに取り組む企業の皆さんには、ぜひ働き方改革についても考えてもらいたいです。これは、どの企業にも必ず必要になってくる改革なのです。

生産性損ねる健康リスク

健康づくりと健康経営

国際医療福祉大学大学院准教授 小川俊夫

 私は教員である傍ら、協会けんぽ本部の研究アドバイザーもしており、その共同研究も踏まえ話します。協会けんぽなど保険者にはレセプト、健診及び検診データが多く存在しますが、ほとんど活用されぬまま保管されていました。最近は電算化が進み厚労省も各保険者がデータ活用を始めました。その一環で「データヘルス計画」という、効率のよい保健事業を進めるための取り組みが始まりました。

 データヘルス計画は、健康経営とも密接に関わっており、日本再興戦略の中でもうたわれています。健康経営は市場規模の拡大、業績の好循環などをもたらすメリットがあり、特に生産性の向上に関しては、労働生産性と健康リスクの間には一定の相関関係があるとされています。病欠のことをアプセンティズム、出勤はしているが生産性が低下する状態のことをプレゼンティズムといいますが、両者を試算したデータによると、企業の損失の半分以上は体調不良などによるものです。疲労や、肥満、不安感などは、医療費としてはそれほど大きくありませんが、それらによる生産性の損失は非常に大きいといわれています。

 研究者のレベルでもこうした健康経営に関する研究は、まだ課題が多いのが現実です。特に活用すべきデータは膨大であるだけでなく大変難しく、各保険者も苦労されています。しかし徐々に、これまでは「おそらくそうだろうな」と思われていた部分がエビデンス(証拠)として見ることができるようになりました。これらデータから取り出されたエビデンスは、企業の健康経営へのフィードバックが可能で、経営者の皆さんにとっても大変役に立つものであることは間違いありません。ただ、こうした分析も一人一人が健診や検診を受けてもらうことが大前提です。皆さんご自身の健康、さらに企業としての健康に留意しつつ、こうしたデータヘルス計画などの活動にご理解いただきたいと思っています。