来年、全国公開を予定する地方創生ムービー「キスできる餃子(ぎょーざ)」が、17日にクランクインした。現在急ピッチで撮影が進められているが、「宇都宮が舞台のラブコメディー」という意外な設定は誰もが気になるところ。脚本を手掛けメガホンを取る秦建日子(はたたけひこ)監督と、主演を務める気鋭の若手女優足立梨花(あだちりか)さんに、映画への思いや役づくりなどについて話を聞いた。

街の持つ空気感大切に 脚本・監督 秦建日子さん

 東京で生まれ育ち、“ふるさと”への憧れは人一倍。「地方創生ムービーの製作は、自分のふるさとづくりでもある」と明かす。

 2016年、三重県桑名市を舞台に地域の文化や歴史を表現した「地方創生ムービー2・0」を初めて手掛けた。

 視聴率や興行収入などの数字よりも「地域の繁栄」を切望した映画製作は、脚本家としての転機となった。「一つの作品を作ることは、大きな戦を闘うようなもの。映画が完成すると地元の人とは戦友という感覚になるので、ふるさとと呼んでも許される街ができた気がする」

 同ムービー2作目の舞台に選んだ宇都宮では、ギョーザの食べ歩きから始めた。「ギョーザはもちろんおいしかったし、日本の多くの人が感情移入してくれそうな街だと感じた。都心に近いながらも、独立した文化を持っているからだろうか」

 宇都宮の街や人と接する回数に比例し、エネルギッシュで地元に対する愛にあふれた栃木への思いは大きくなった。「突出した観光資源ではなく、街全体の持っている空気感みたいなものを大切に撮っていきたい」。ごくありふれた街角の一つが重要なワンシーンとなる。

 今回の映画では、ギョーザを題材としながらも、ピュアなラブコメディーが繰り広げられる。「ギョーザが持つ元々のイメージはロマンチックな雰囲気ではないだろう。あえて遠いイメージのものを組み合わせるのが面白い化学反応を起こす王道。ギョーザの映画には絶対ラブストーリーしかない」

 映画の成功は既に確信に近い。「宇都宮に来てギョーザを食べたいと思ってもらえなかったら負けという気持ちでいる」。そのために、ギョーザの新たな魅力をどのように引き出すのか。「それはまだ内緒です」

はた・たけひこ 1968年生まれ。東京都出身。脚本家として映画「チェケラッチョ!!」、テレビドラマ「HERO」「ドラゴン桜」などを手掛けたほか、「アンフェア」の原作を執筆。小説家、劇作家、演出家としても活躍している。

母親を手本に新境地へ 主演 足立梨花さん

 「母親なんだけど、まだ大人になりきれていない部分がある。娘の前でもいい男性が現れると、ときめいちゃうところもあって、まだ恋もしたいっていうのが陽子ちゃんなのかな」

 思い描くのは、実家のギョーザ屋の再建と子育てに奮闘するバツイチのシングルマザー・藤田陽子(ふじたようこ)だ。

 初めて臨む母親役だが「私の母が20歳で結婚して21で私を産んだので、だいたいこんな感じかな、というのがある。『お母さんってこうだったな』と昔を思い返しながらできればいいですね」。手本となる身近な存在がいるだけに、新たな挑戦にも気負いはない。

 かつては「Jリーグ特命PR部女子マネージャー」として栃木SCの試合で訪れた宇都宮。今回はギョーザ屋の娘を演じる女優として再訪し、街なかで長蛇の列ができたギョーザ店を目の当たりにした。

 「後ろの人は食べるのが夜になるんじゃないかっていうほど。でも、みんなが求めて並ぶってなかなかないじゃないですか」と、ギョーザが人を引き寄せるパワーに目を見張る。

 もともと好物だというギョーザは家でも作るほどで「いっぱい食べたいので、野菜多めがいい。その方があっさりしていていくらでもいけちゃう。あと、しっかりニンニクが入っている方が好きです」。まさに宇都宮の映画の“申し子”だ。

 すでにクランクインし、タイトな撮影スケジュールが続くが「『恋ってすてきだな』『ギョーザおいしそう。宇都宮に行ってみたいな』と思ってもらえるような映画にしたい」と、地方創生ムービーを背負う覚悟はできている。

 「あとはギョーザを作る姿、成長していく部分を見ていただければうれしいですね」。その強いまなざしは、既に宇都宮の藤田陽子そのものだった。

あだち・りか 1992年長崎県生まれ、三重県育ち。2007年の「ホリプロタレントスカウトキャラバン」グランプリ。映画やテレビドラマなどに多数出演。今秋公開の映画「アヤメくんののんびり肉食日誌」でも主演を務めている。