梨の魅力は、上品でほどよい甘さ、夏を感じさせるみずみずしい食感でしょう。代表的な品種の「幸水」「豊水」「新高」、そして栃木県の農業試験場で生まれた「にっこり」と時季を追うごとに違う品種が登場し、それぞれの味を楽しめます。

 県内第2の人口を持つ小山市。JAおやまで梨部会長を務める梨生産者の田中久雄(たなかひさお)さん(67)は妻の早苗(さなえ)さんとともに、「幸水」「豊水」「新高」「にっこり」の4品種を生産しています。8月から10月下旬まで、出荷や販売で忙しい日々が続きます。

 小山市は栃木県でも気温が高い地域です。そのため、露地ものの出荷は県内でも一番早いということです。「幸水」から始まり、「豊水」「新高」「にっこり」と出荷作業が続いていきます。

 梨生産の1年間のスケジュールを見てみましょう。12月から3月まで枝を整える剪定(せんてい)を行います。4月になると花が咲きます。「にっこり」など出荷の遅い品種の方が、「幸水」など出荷の早い品種よりも花が早く咲くそうです。この後、梨を大きくして栄養を行き渡らせるための「摘果(てきか)」と呼ばれる作業をします。このほか、病害虫から梨を守るための防除作業も「なし病害虫防除栽培方針」に基づいて時季を見て行っていきます。

 「防除作業は行う時季を間違うとおいしい梨にはなりません。また消費者に安心、安全な梨を提供するため、どういう農薬をいつ散布したのか、といった報告書を出荷の際提出します」といいます。

 現在、JAおやまの梨部会には約70人の部会員がいますが、ピーク時に比べ30人近く減ってしまったそうです。「一昨年の大雪でビニールハウスが倒壊して、辞めてしまった人もいます。後継者不足に加え、自然災害の影響は大きいですね」と振り返ります。

 それでも田中さんは「小山の梨は甘く品質が良いといわれています。それも先人が築いてきたからこそです。後継者不足など課題はありますが、これからも消費者に安心して食べてもらえる梨を提供していきたいですね」と話しています。


◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇

●梨の歴史 日本では江戸時代から栽培技術が発達。明治時代に「二十世紀」「長十郎」が発見された。戦後には「幸水」「新高」「豊水」が登場し、普及した。

●県内の梨 小山市、芳賀町、宇都宮市など県内全域で生産されている。幸水、豊水をはじめ、栃木県のオリジナル品種「にっこり」「おりひめ」など多彩な品種が栽培されている。生産量は全国3位。「にっこり」は果実が大きく、糖度が高いジューシーな梨。

次代を担う/JA足利

中村 欣司(なかむら・きんじ)さん(41)/人材確保し安定生産を



 36歳の時、父(昌哉(まさや)さん)の後継者として就農しました。現在、5年目です。就農する前は造園土木業をしていました。「一人親方」として栃木県内だけでなく、埼玉県や東京都などの現場で仕事をしていました。工場や分譲地の庭を造るなどの仕事でしたが、両親が高齢になってきたため、「やるからには中途半端ではいけない。じっくりやろう」と造園土木業を辞めてトマト農家を継ぐことにしました。

 以前から田植えの時季は両親を手伝っていたので、すんなり入っていけました。トマト生産は9月ごろから育苗などの準備が始まります。年末年始は落ち着きますが、4、5月ごろには収穫、出荷のピークを迎えます。ちょうどこの時季は田植えの準備などと重なるため、一年で一番忙しい時季ですね。

 JA足利のトマト部会の青年会で副会長を務めています。現在、青年会には20代後半から30代前半にかけての16人が所属しています。

 トマト生産は忙しい時期が短期間に集中します。短期間で人を雇うとなるとなかなか集まらないので、人材の確保が課題です。将来はビニールハウスを増設して、生産量を拡大していきたいですね。