緑豊かな日本の原風景を残す茂木の里山。かつて葉タバコ畑だった斜面には現在、つぶらなブルーベリーが枝もたわわに実り、夏の日差しを受け青く輝いています。

 ▽地域挙げて村おこし

 茂木町では、多種多様なグリーンツーリズムにより「村おこし」が進められてきました。町の北東部、清流・那珂川の流れる山内地区では、2000(平成12)年からブルーベリーの栽培を開始。ユズのオーナー制度で知られる「ゆずの里かおり村」と、柿、キウイを生産する同地区内のメンバーで「山内フルーツ村」(40人)を組織しました。ブルーベリーはそのうちの約半数の“村民”が、約2ヘクタールの畑から年間約3トンを生産し、JAはが野に出荷しています。

 県内のブルーベリー産地は、大田原市や佐野市など各地に広がっていますが、ほとんどが一般観光客向けの摘み取り農園。フルーツ村のようにJAを通して市場などに出している産地はほとんどないそうです。

 「ここも昔は葉タバコ畑でした」と、山内フルーツ村会長の馬籠伸(まごめしん)さん(62)=茂木町山内=は、整然と並ぶブルーベリーの木々を見つめながら語ります。近隣の耕地を借り受け、現在は40アールで、約50種、850本以上のブルーベリーを栽培しています。

 山内地区が活性化を目指しブルーベリーの生産を選んだ理由は、(1)100%無農薬で栽培が可能(2)初期投資がわずか(3)高齢者でも収穫が楽-などのメリットがあるためです。村の発足当初から事務局長を務め、村の歩みを支えてきた馬籠さんは「フルーツ村は、みんな元気。私など60歳代はまだまだ若手です。80歳代のメンバーも頑張っていますから」と満面の笑みを見せます。

 ▽「茂木は栽培好適地」

 ブルーベリーはハイブッシュ系とラビットアイ系に大別され、ハイブッシュは高地寒冷地向き、ラビットアイは温暖な地域向き。栃木県はどちらの系統も適しており、6月中旬から9月いっぱいまで複数の品種を継続して生産できます。さらに茂木の地形は、「地下水が豊富な上、傾斜地で水はけがよい。茂木には好条件がそろっていますので、質の高い果実が味わえますよ」と、馬籠さんはアピールします。

 今年の作柄は、大震災の影響もなく「豊作」。暑すぎず雨量が少なかったためだそうです。JAはが野の担当者も「かなりのハイペース」と驚いています。また、山内フルーツ村で唯一の観光摘み取り園「山里うぐいす農園」(代表・茂垣一郎(もがきいちろう)さん、7人)も好評。45アールに4種850本のブルーベリーが栽培されている農園には、年間約500人の観光客が訪れ、ブルーベリーを味わいながら、のどかな農山村の風景を堪能しています。

 フルーツ村のブルーベリーの問い合わせはJAはが野茂木地区営農センター電話0285・63・1249。

◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇

  • ツツジ科 ブルーベリーはツツジ科スノキ属の北アメリカ原産の植物。欧州から移住した人々は、ネーティブアメリカンから実を分けてもらい飢えをしのいだことから、北米では「命の恩人」とも呼ばれている。

  • ベリー ベリーとはイチゴやラズベリーなど多肉質な果実の総称。日本語では漿果(しょうか)(液果)とも呼ばれる。ベリー以外の漿果にはトマトやキウイなども含まれる。

  • おいしい食べ方 生食の場合は、粒の大小にもよるが、1粒ずつでなく2、3個まとめて食べた方がよい。冷凍させ、シャーベット状にして食べるのもおいしい。

  • 「ブルーベリーの父」 1960年代、東京農工大の岩垣駛夫(いわがきはやお)教授が、農林水産省から譲り受けたラピッドアイ種を研究した。その後、東京、長野、福島などでの生産が拡大した。


 コラムオアシス 農政とTPP/100年の礎確固たるものに

 今、我が国農政は大きな岐路にさしかかっている。戦後日本の農政は、「猫の目農政」と言われたように、その時の政権下で大きな変化を求められてきた。我々農を職業とする者も、時の政権に命運を委ねてきた。

 しかし、今からでも遅くない。我々農協組合員の力を結集し、今後の日本の農業政策をしっかり見直し、未来へ継げる農政の方向性を作るべきである。地球温暖化が進み、食料自給率向上が叫ばれている現状下、日本ほど食料の安心・安全に配慮している国はない。このように生産履歴のしっかりしている食料を提供している農家に対して、国は何をしようとしているのか。

 今、世界では人口が増加し、そして飽食の中で食料格差が起きていると言われる。そのような中、国はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に参加しようとしている。日本は本当に参加する必要があるだろうか。現政権からはいまだしっかりとした説明がなされていない。特に、今般の東日本大震災によって、農業・漁業の主たる産地が壊滅的打撃を受けている。復旧にはどれほどの時間と費用が必要か想像を絶する。

 TPPに参加すれば、原則全ての関税が撤廃され、農業のみならず全ての分野において無条件に開放されてしまう。これが本当に日本の国に利があるだろうか。日本の将来を考えると、非常に心もとない感がするのは自分だけではあるまい。

 今後、日本農政の百年の礎を確固たるものにすることが、今、我々に与えられている責務であると痛感している。

(JAうつのみや代表理事専務 柿上淳)

読者の声 ~5月の紙面から~

・県の放射線物質モニタリング調査が継続的に実施されていることを知り、安心しました。県民が「栃木県産」を食べて他県の方に安全であることを発信したいです。(58歳・女性)

・原発事故が収束しない限り不安が消えることはありませんが、こんなに頑張っている農家の方がいるんですもの。安全・安心な農産物を買いたいと思います。(55歳・女性)

・時間は掛かるかもしれないけれど、栃木の農畜産業は立て直しの体力があります。大丈夫だと信じています。気持ちが暗くなりつつありますが、少しでも明るく、ほほえみを忘れずに、気持ちだけでも明るく…。(46歳・女性)

・トマト農家の古口雄一さんをはじめ、お米、野菜などを全力で作ってくださっている方々へ、私たち消費者も全力で支えたいと思います。安全・安心な栃木の野菜などの農産物を楽しみに応援し続けます。(57歳・女性)



 [写真説明]最盛期を迎えた茂木のブルーベリー畑で摘み取りを楽しむ親子=茂木町山内の「山里うぐいす農園」

 [写真説明]「今年は豊作。おいしい茂木のブルーベリーを味わってほしい」と話す馬籠さん