独特の香りと苦みを持ち、冬場の貴重な青菜野菜として活躍する春菊。カロテンやビタミン類など栄養たっぷりで、鍋料理に欠かせません。漢方では、のぼせをとって熱を下げるとされ、抵抗力や回復を高める「食べる風邪薬」として重宝されています。

 ■ 県内最多の生産 ■

 栃木県内の農協で最多の生産量を誇るのがJAしおのや春菊部会(川上安恒(かわかみやすちか)部会長)。昨年度の部会員は196戸に上り、合計18・3ヘクタールで550トンを生産しました。

 出荷は通年で作型も秋冬穫りと夏秋穫りの2パターンがありますが、メーンは秋冬穫りとか。秋冬穫りの場合、播種(はしゅ)は9月ごろから10月にかけて、まず苗箱に行います。20日程度経過してから、ビニールハウス内に定植します。

 副部会長を務める猪瀬伸一(いのせしんいち)さん=高根沢町=は「土づくりが重要。完熟した有機質の堆肥(たいひ)を活用して、春菊の生育が安定し、品質が向上するようにします」と説明します。

 出荷シーズンは11月から翌年3月まで。現在、猪瀬さんのビニールハウスでは青々として、みずみずしい春菊がたくさん育っています。猪瀬さんは茎が太く、葉の切れ込みが大きい「菊蔵(きくぞう)」という品種を栽培しているそうです。

 ■ 地下水で保温 ■

 冬場の工程で大切なのは、温度管理。厳寒期に温度が氷点下になると、作物は“仮死状態”となり、生育が止まってしまうからです。このため、猪瀬さんはビニールハウス内を二重にしたウォーターカーテンハウスを採用。昼間は内側のビニールを閉じますが、夕方に広げて二重の屋根を作り出します。

 そして夜間、ハウス内を冷やさないため、地下水をくみ上げて内側のビニール屋根に霧状に散水。「地下水の温度は16度ぐらいなので、ハウス内の温度を7度ぐらいに保てる」と猪瀬さん。散水は午後6時から翌朝の7時まで、毎日行います。

 ■ 収穫は手作業 ■

 収穫作業は朝夕の2回、30センチほどに伸びた順に、芽をハサミでカット。最初に芯芽を摘み、余分な脇芽を取り除きながら、残った脇芽を育てます。

 1株につき収穫できるのは15~16本。猪瀬さんの妻、キミさんは「腰を屈めて、芽を選別しながらの手作業。毎日のことで、栽培中は休みなしです」と、栽培の苦労を語ります。

 こうして多くの手間をかけて育った春菊。鍋料理が代表的ですが、おひたしやごま和え、天ぷら、サラダなど使い道は多様です。キミさんのお薦めは「茎を軽くゆでて、マヨネーズで頂く」料理。今、まさに食べどきを迎えています。

【安全・安心の取り組み】 JAしおのや春菊部会は本年度から、農業生産工程管理(GAP)を導入し、安全安心に力を入れている。春菊でのGAP導入は県内で初めて。また、部会全員が環境に優しい栽培技術を実践する「エコファーマー」の認定を受けている。

 [写真説明]出荷のピークを迎えている春菊。腰を屈めながらの収穫作業は体力的な負担も大きい=高根沢町

◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇ 春菊編

  • 由来 キク科で地中海沿岸が原産。ヨーロッパでは鑑賞用として栽培されている。食用とするのは中国や東南アジアで、日本には15世紀ごろ入ってきたとされる。春にキクに似た花を咲かせるため、関東では「春菊」と呼ばれる。関西では「菊菜」の名でも親しまれている。

  • 品種 葉の大きさで大葉・中葉・小葉の3種類に分かれ、関東と関西では中葉、中国地方から西では大葉が主流。小葉はほとんど栽培されていないという。中葉も関東と関西では作型、形状が異なる。

  • 選び方と保存法 葉先まで緑色が濃く、みずみずしいものを選ぶ。葉に黄色が混じっていたり、黒ずんでいるものは避ける。乾燥するとすぐにしおれるので、濡れた新聞紙などで包み、茎の部分を下にして野菜室で立てて保存する。ゆでたものは、2~3日保存可能だが、それ以上なら冷凍庫に。

 コラムオアシス 国の米政策、実効性ある取り組みを

 先日の新聞紙上に、農林水産大臣が記者団に対して「生産調整について国のかかわりを弱めていく。また廃止も含めて早急に検討する必要がある」と発表した記事が掲載されていました。

 私たち農業関係者にとってはもっと国のかかわりを強め、実効性のある減反政策にしてほしいと思っていますが、逆行する報道に驚いています。

 米政策は政府にとって厄介者であるかのように以前から感じていましたが、国民の主食の米をどのように考えているのでしょうか。米政策は経済の論理で片付けられるものではないはずです。政府は安全で安心して食べられる食料を安定して供給する義務があるはずです。それが国民に対する食料安全保障ではないでしょうか。

 昨年は農業資材、燃料などの価格高騰で先行き不安な日々が続きました。最近、飼料、燃料などの価格は下がってきましたが、今度は減反政策の再検討の報道など、私たちが安心して農業に専念できる日はいつ来るのでしょうか。安心して農業を営む日が来てほしいものです。

 そのためには消費者の皆さんに日本農業の良き応援団になっていただき、私たちはそれに応えていかなければなりません。またそれによって力が湧いてくるものです。私たち生産者と消費者の皆さんで、日本の食料自給率40%を押し上げて行こうではありませんか!

(JAなすの代表理事組合長 川嶋寛)

◇◆◇ 読者の声 ◇◆◇ ~11月号から~

 【食事に欠かせない大豆】大豆は、毎日の食事には欠かせない大切な食材です。栃木は生産が全国9位と上位、とてもうれしいです。私は外国産より県内の大豆を選んでいます。自分のため、家族のため、日本の農業のために!(44歳、女性)

 【国内産に注目】日本の食糧問題…外国とのコスト競争でのご苦労、お察しいたします。中国産の食品の問題もあり、全国民が国内産に目を向けています。安心・安全の農産物を待っています。(60歳、女性)

 【参考になる栄養成分】レシピがとても助かります。栄養成分の役割についても参考になりました。(44歳、女性)