TOP > セレクト > とちぎ防災・減災プロジェクト > 2017とちぎ防災マスター育成講座 [第3回] 救急救命の基礎を身につけ、避難所生活を実体験

  • 文字サイズ
  • 文字サイズ小
  • 文字サイズ中
  • 文字サイズ大

2017とちぎ防災マスター育成講座 [第3回] 救急救命の基礎を身につけ、避難所生活を実体験

[第3回]救急救命の基礎を身につけ、避難所生活を実体験

第1部
「救急法基礎講習」
講師 日本赤十字社栃木県支部
第2部
避難所生活体験プログラム「避難所の設営」
講師 NPO法人栃木県防災士会
第3部
「避難所運営ゲーム」グループ実践
講師 NPO法人栃木県防災士会

緊急時に備えて、救急救命、防災のノウハウを体で覚えよう

 8月5日(土)からスタートした今年度の「とちぎ防災マスター育成講座」もいよいよ最終回を迎えました。8月26日(土)13時から翌朝9時までニューみくら(宇都宮市)で開催された第3回目の講習のメニューは、「救急法基礎講習」と「避難所生活体験プログラム」。救急法を学んだ後に参加者自身が避難所を設営し、実際に宿泊体験をする長丁場の講習です。着替えや上履き等、宿泊体験に必要な荷物を抱えて集まった受講者たちの表情には、期待と不安が入り交じっていました。

 まず最初に行われたのは、第1部の「救急法基礎講習」。日本赤十字社栃木県支部の指導員が講師となり、テキストに基づいて救命にあたる場合の心がまえや心肺蘇生のポイントなどを講義しました。学科のポイント解説を担当した浅賀指導員は「自分の身を守った上で、傷病者を医師などに引き継ぐための手当をするのが救急救命の基本です。周囲の状況を観察し、必ず安全を確保して行ってください」と注意を促しました。

 約1時間半の講義の後は、併設の体育館でAEDを用いた心肺蘇生法の実践講義が行われました。傷病者を発見したら、すぐに周囲の安全を確認。傷病者のバイタルサインをチェックした後、周囲の人に通報とAED手配を指示し、すぐに心臓マッサージと人工呼吸による心肺蘇生を開始。AEDが到着後に電気ショックを与え、すかさず心肺蘇生を再開。救急車到着の合図まで同じリズムで心臓マッサージを続けます。うつ伏せに倒れた人の気道を確保する方法や、命を救う大切なポイントとなる毛布を用いた保温を学んだ後に、受講者は3人1組となり、この一連の流れを何度も繰り返し行いました。体育館内は次第に熱気を帯び、受講者たちは皆、汗だくです。それでもリズムが遅れたり、的確なマッサージができない場合やAEDの使用手順が違っている場合は、容赦なく厳しい指導が飛んできます。最後には、一人ずつ指導員の前で心肺蘇生を行い、実技の審査を受けました。

 しかし、それで終わりではありません。教室に戻ると、10問の学科検定(ペーパーテスト)が待ち受けていました。「赤十字ベーシックライフサポーターの認定証を発行するために、最低限必要な知識と技術がしっかりと身についているかを確認する必要があります。単なる体験ではなく、実際に使える知識と技術にすることが重要です」と話す浅賀指導員。真剣に救急法に取り組んだ受講生たちは、実技・学科ともに基準をクリアし、全員が認定証を手にすることができました。

 時刻はすでに17時半。約10分間の休憩を挟んで、第2部の避難所生活体験プログラム「避難所の設営」がさっそくスタートしました。第1部の講習で皆さんヘトヘトにお疲れのはずですが、「実際の災害時には、疲れたなんて言ってられませんよね」「避難所の宿泊体験が楽しみ」と、意欲満々。NPO法人栃木県防災士会の稲葉理事長をはじめ防災士の方々にアドバイスを受けながら、チームワーク良く避難所を設営し、アルファ米と缶詰の夕食でお腹を満たしました。

 次は第3部の「避難所運営ゲーム」です。受講者たちは5グループに分かれてカードを用いてさまざまな事情を抱えた250人の避難者を避難所に受け入れ、刻々と変わる状況に対応して運営していくHUG(Hinanzyo…避難所、Unei…運営、Game…ゲーム)に挑戦。さまざまなアクシデントに頭を抱えたり、真剣にディスカッションを重ねたりしながら、19時から20時半までグループ実践に取り組みました。

 就寝は22時。「思ったよりも段ボールのベッドは快適です」と、ぐっすり眠れた人や、「暑い時期の避難所の辛さがよく分かりました」と、少々寝不足の人も…。翌朝は6時に起床し、ラジオ体操の後に災害備蓄用パンの朝食を摂り、片付けをして総まとめの振り返り。参加者からは「頭で分かっていても、実際に分からないことが多いと思う。地域の多くの人に参加を促したい」「学んだことを自治会活動に生かしたい」「防災士を目指して学んでいきます」など、前向きな意見が多数あがりました。


受講者インタビュー

さくら市在住 笹沼聖輝さん

 大学では植物の研究一筋で、社会との接点も少ない生活をしていました。卒業後に地元にUターンしてきて、地域のために何ができるだろうかと考えるようになったことが、この講座に参加した理由です。講義を受けて、災害の恐ろしさを痛感するとともに、自分も防災の面で地域の役に立てるのではないかという自信も湧いてきています。学生や若い人たちにこそ、この講座で学んでほしいと感じました。

鹿沼市在住 R・Sさん

 鹿沼市でも2年前に関東・東北豪雨による水害を受け、災害は人ごとではなくなりました。防災について少しでも学んでおきたいと、軽い気持ちで参加しましたが、なかなかハードな内容で…AEDを使った救急法基礎講習の実技は、一生懸命にやり過ぎて体が痛くなったほどです。救命のための応急措置や避難所の設営などは、緊急時を想定して何度も繰り返し行って、しっかりと体で覚えないといけないことがよく分かりました。とても充実した、中身の濃い講習だったと思います。

講師インタビュー
日本赤十字社栃木県支部 指導員 浅賀 昌代さん

 栃木県の救命率は決して高くはありません。日本赤十字社栃木県支部でも県内のさまざまな団体や企業に出向いて積極的に救急法等の講習を行っており、AEDの使い方等を知っているという人は確実に増加しています。それでも、いざ応急処置が必要な心肺停止状態の人を見かけたときに、躊躇してしまったり、何もできないという人が多いというのが現状です。特に今回は、防災マスターとして地域で活躍が期待される方々への講義なので、「知る」に留まらず、「いざというときに一歩を踏み出せる自信がつく」ことを目標に、ハードな講習を行いました。短い時間でしたが、皆さん、しっかりと救命の正しい技術を体に覚え込ませていただいたと思います。その技術を忘れずに、緊急時や災害時に勇気ある一歩を踏み出せば、多くの人命が救えるはずです。

NPO法人栃木県防災士会 理事長 稲葉 茂さん

 防災の重要なキーワードとなるのは「向こう三軒両隣」。一人の人が目の届く範囲をしっかりと意識して防災できれば、地域全体の防災力は自然に上がっていきます。防災マスターの皆さんには、お住まいの地域のリーダーとなり、緊急時や災害時に受け身ではなく自ら動き、救命や避難所の設営・運営にあたってほしいと思います。さらに、今回の講義で得た基礎知識や経験を生かして、防災士の資格取得にもぜひチャレンジしてください。今、全国で約13万人が防災士として登録しており、栃木県内にも約2200人の防災士がいます。作新学院大学の防災士養成研修講座開講により、防災士資格はかなり取得しやすくなりました。防災への関心を高め、知識や技術を広めていく防災士会の活動継続には、ボランティア精神が必要です。防災マスターの皆さんと、防災士会で共に活動できることを願っています。