足利事件で再審公判中の菅家利和さん(63)の取り調べ録音テープが21、22日に宇都宮地裁で再生されるが、複数の元捜査関係者が20日までの下野新聞の取材に、塩原町で旅館経営者夫妻が殺害された1961年の「ホテル日本閣事件」と96年の栃木市の連続殺人事件でも容疑者の取り調べを一部録音していたと証言した。重大事件をめぐる供述の任意性担保などが目的だったとみられるが、こうした「密室の証拠」が公開の法廷で再生された例は全国的にもほとんどなく、足利事件のテープ再生は異例のケースといえる。
複数の元捜査関係者によると、県警はホテル日本閣事件の主犯で女の小林カウ・元死刑囚(70年6月に死刑執行)を1961年2月に逮捕後、調べ官がオープンリールタイプの録音機で取り調べ状況を録音したという。
当時を知る関係者の一人は「重大事件で被疑者が女ということもあり、自白の任意性や信用性が後で問題となった時の担保として録音したのだと思う。だれの指示で録音したのかや、総録音時間などはもう記憶にない」と話している。
一方、栃木市の連続殺人事件で県警は96年7月に長勝久死刑囚(最高裁で2006年確定)を逮捕。当時の宇都宮地検の担当検事が長死刑囚の承諾を得て、取り調べ内容の一部を録音したとされる。
下野新聞の取材に当時の担当検事は、録音の有無や目的について「ノーコメント」としている。
足利事件などを指揮した県警刑事部の元幹部は「殺人などの重要事件で容疑者が否認するなどしたケースでは、現場の判断で取り調べを録音することもあった。供述の証拠能力を後で内部的に確認する目的だった。組織として現場に録音を指示したことはない」と話している。
取り調べの録音・録画(可視化)をめぐり検察は2006年から、警察も08年から裁判員裁判対象事件の一部で試行的に導入。しかし調書を読み聞かせている場面などに限定していることから、日弁連などは取り調べ過程の全面可視化を求めている。