保健師の訪問に笑顔を見せる伊東さん。県は産後1カ月の訪問実施率向上を図る=6日、鹿沼市内

 県が8日公表した2018年度当初予算案には、暮らしの安全や安心に直結する事業が盛り込まれた。妊娠から育児まで切れ目なく母子を支える子育て支援を進めるほか、全国的な課題の働き方改革にも対応、水害など万が一への備えも進める。那須町の雪崩事故を教訓とした再発防止策も予算案に反映された。

■子育て支援 産後うつ、虐待防止をサポート

 鹿沼市内の住宅地の一角。リビングで伊東琴(いとうこと)さん(28)は生後3週間の次男を抱き、訪問した保健師の長谷川(はせがわ)ルミさん(47)に笑顔を見せた。

 2人目は少し余裕ができたが、長男(2)の時は違った。「産んですぐの頃は新しい心配事がどんどん生まれて、毎日が不安だった」。今回は余裕があるとはいえ「長谷川さんが来てくれるだけで、とても安心できた」と感謝した。

 同市は昨年、子育て世代包括支援センターを設置。妊娠届を出した全員とすぐ接触するようにし、産後1カ月の保健師らの訪問実施率が向上した。長谷川さんは「特に、リスクが高い母親への訪問は必ず早めに行うようにしている」と話す。

 産後うつや新生児虐待は、産後1カ月で起きやすいとされる。県はこの期間の対策を重視し2018年度予算案に、妊娠から育児まで切れ目なく母子を支援する「頑張るママ応援パスポート(仮称)事業」の150万円を計上した。

 市町の保健師や助産師による訪問実施率の向上、県内10市4町が設置している子育て世代包括支援センターの拡充を図る。18年度は制度設計を行い、19年度から具体化させる予定。

 県は「必要な人に支援が100%届く体制を全県に整備したい」としている。

■働き方改革 中小企業の改善、後押し

 広告大手電通の違法残業事件やNHK記者の過労死などが相次ぎ、働き方改革が急務となる中、独自に改革に乗り出す企業も出始めている。

 宇都宮市屋板町の建設会社「晋豊(しんぽう)建設」。従業員30人のうち27人が男性の職場で、有給休暇の取得促進や子育て支援などを推進している。「社員が公私共に充実した生活を送ることは会社にとって大きなメリットになる」。阿久津信一(あくつしんいち)社長(47)は断言する。

 2007年に社長に就き、就業規則を全面的に見直した。大手ゼネコン勤務の経験から「毎日終電で帰宅するような働き方が会社の利益を生むとは限らない」と思い至ったからだ。

 取り組みが認められ、11年に建設業として北関東で初めて、次世代育成支援対策推進法に基づく子育てサポート企業「くるみん」に選ばれた。09年に育児休業と短時間勤務を取得した従業員の助川誠一(すけがわせいいち)さん(48)は「家族の絆が強まった」と振り返る。

 県は18年度予算案に、長時間労働抑制などで県内中小企業を支援する「働き方改革応援事業」として810万円を盛り込んだ。専門家と連携し現場改善を後押しするほか、無料相談会などを通じて改革を推進する企業の拡大を図る。

■防災 洪水逃げ遅れゼロへ

 1998年の那須水害から20年、2015年の関東・東北豪雨から3年。洪水からの「逃げ遅れゼロ」を目指し、県は18年度、関係機関の初動対応を時系列で整理した「タイムライン(事前防災行動計画)」作成を推進する。18年度予算案に市町のタイムライン作成支援のための2970万円を計上した。

 「あの時は、この橋も飲み込まれるんじゃないかと思った」。鹿沼市玉田町の黒川に架かる御成橋(おなりばし)。川沿いでガソリンスタンドを経営する小太刀康夫(こだちやすお)さん(71)は関東・東北豪雨を思い返し、表情をこわばらせた。

 護岸はコンクリートで整備されたが、不安もよぎる。黒川沿いの全世帯に避難指示が出たあの夜。同市はメールや広報車で避難指示を伝えたが、雨や濁流のごう音の中、小太刀さんらには届かなかった。妻裕子(ひろこ)さん(69)は当時を振り返り、「危険な水かさが明確に分かると、少しは安心かな。避難の参考になる」と話す。

 県は18年度、黒川を含む10河川で避難情報発表などの目安となる「基準水位」を決める考えだ。同市はタイムライン作成の準備を始めており、18年度以降の運用開始を目指す。