放射状に伸びる割れ目が菊の花のように美しい菊炭

 茶の湯など日本の伝統文化を支える「お茶炭(菊炭(きくずみ))」の生産を再興し里山の再生を進める取り組みが15日までに、菊炭の名産地の市貝町などで始まった。NPO法人と製炭業者が協働で原木のクヌギを植えるプロジェクトに着手、都内のNPO法人も、同町に拠点を置く花王の助成を得て植林を始めた。生産の衰退に危機感を抱く製炭業界も注目している。

 市貝産の菊炭は以前から、ブランド炭として「芳賀もの」と呼ばれるなど、その品質が高く評価されてきた。一方、原木などの生産は広大な里山の環境を守ることにつながってきた。しかし現在、市貝町内の製炭者は数人しかいない。

 「菊炭がなくなれば茶道もなくなる」。8日、芳賀町の民有地で行われたNPO法人「炭の木植え隊」(東京都中央区)の植林作業。谷田貝光克(やたがいみつよし)理事長(74)=東京大名誉教授=は強く訴えた。まず苗木300本を植える。

 製炭者としてこの日の植林活動を指導した市貝町石下(いしおろし)、製炭業片岡信夫(かたおかのぶお)さん(53)は、その2日前、同町のNPO法人「オオタカ保護基金」(遠藤孝一(えんどうこういち)代表)と「サシバの里・菊炭プロジェクト」を始動した。

 まず、ドングリから育てた3年生の1千本の苗を町内の同基金の保全地約4千平方メートルに植え、7年後に伐採して菊炭にする。この「クヌギ植林保全地(仮称)」を拡大していく計画だ。

 菊炭には、7年ほど育てたクヌギの細く丸い若木を定期的に切って使うのが最適だ。「切っても芽が出て、利用すればするほど森は若返る」(谷田貝さん)。遠藤代表(59)は「草地性の動植物の生息地・生育地になり、サシバの狩り場になる。菊炭の収益で自立的、持続的な保全が可能になり、環境と経済両立のモデルになる」と期待する。