足利事件の再審初公判で宇都宮地裁が、弁護側、検察側双方のDNA型再鑑定人の証人尋問を認め、取り調べ録音テープの提出を命じるなど、弁護団が訴えてきた「誤判原因の究明」にひとまず道が開けた。一方で地裁は原因究明を目的とした証拠調べは「刑事裁判の枠を逸脱する」との審理方針も示しており、再審での究明は限界があるのも事実。専門家からは「第三者機関が事件を総合的に検証し、どこに問題があったのか究明する制度をつくるべきだ」との指摘が出ている。
日本では冤罪事件の原因を究明するシステムは制度化されておらず、弁護側が再審や国家賠償請求訴訟で原因究明の道を探っているのが現状だ。
強姦・同未遂事件で元タクシー運転手が服役後に真犯人が現れた富山県の「氷見事件」で2007年に行われた再審では、弁護側が原因究明のため富山県警取調官の証人尋問を求めた。
だが富山地裁高岡支部は「必要性がない」と却下。弁護側が訴えた再審での原因究明は実現せず今春、国家賠償請求訴訟に踏み切った。
欧米では冤罪事件の検証制度を持つ国も多い。イギリスは再審無罪事件があった場合、行政や裁判所から独立した王立委員会が設置される。調査権限を持ち、誤判原因を徹底調査する。結果は国民に公開するほか、捜査当局や裁判所に勧告も行う。
またカナダでも再審無罪が決まると調査委員会が設置される。調査結果から司法制度改革につながったケースもある。同様の制度はオーストラリアなどにもある。
再審に詳しい一橋大法科大学院の村岡啓一教授(刑事法)は「再審での証拠調べは判決に絡む周辺事情に限られる。問題を総合的、構造的に解明するには、第三者機関による検証制度をつくる必要がある」と提言している。