宇都宮市大谷町で1989年2月に起きた大谷石採取場跡地(廃坑)の大陥没の後、抜本的な安全対策とされながら地域の合意形成に至らず棚上げされ続けてきた地下空間の「埋め戻し」が、一つの廃坑で試験的に行われている。地元業者でつくる大谷石材協同組合が県などと連携し、公共工事で発生した残土(公共残土)を投入する事業。本格実施に向けてはクリアすべき課題も少なくないが、組合関係者は「安全対策の一つのモデルにしたい」と他の廃坑への広がりも視野に入れている。大陥没は10日、発生から29年を迎える。

 同組合や県工業振興課によると、埋め戻しを進めるのは、同市大谷町を流れる姿川の近くにある中規模の廃坑。採石していた業者は既に事業を廃止している。

 廃坑は比較的新しく、残柱や天板などの状態から「相対的にみて(陥没の)危険度が高い場所ではない」(同課)というが、2015年9月の関東・東北豪雨で姿川が氾濫した影響で地表部分が崩落。被害拡大を防ぐためにも対策が急務になったという。地権者の相談を受けた同組合が県などの関係機関と協議し16年11月、埋め戻しに着手した。

 埋め戻しに用いる公共残土は、持ち込み業者に処理料を支払ってもらって同組合が受け入れる。一時保管所に置き、ごみなどが混じっていないのを確認した上で、組合関係者が廃坑に投入するのが流れだ。

 県が同市西川田地区で整備する「総合スポーツゾーン」建設現場の公共残土などを受け入れており、開始1年余りで「(地下空洞につながる)立て坑の6~7割を埋め戻した」(同組合)。残土の処理料の一部は今後、他の廃坑周辺にフェンスなどを設置する費用に充てる考えもあるという。

 一方、公共残土は必ずしも安定的に発生するわけではなく、処理費用は運搬距離などで左右されるため、事業の見通しが難しい側面もある。