茨城県の霞ケ浦と那珂川、利根川を計約46キロの地下トンネルで結ぶ国土交通省の霞ケ浦導水事業。水産資源への影響を危惧する栃木、茨城両県の漁連・漁協5団体が取水口の建設差し止めを求めた訴訟は控訴審の審理が続き、工事はストップしている。こうした中、同省は完成した部分の施設見学会を水戸市内で開いた。参加者と共に地下空間へ足を踏み入れると、時間が止まったままの巨大施設が静かに威容を見せつけていた。

 ■裁判には触れず■

 1月29日、事業の拠点の一つ那珂機場(水戸市渡里町)の沈砂地を訪れた。近くの那珂川から取水後、霞ケ浦へ送る前に砂やごみを取り除く設備。取水口に最も近い部分だ。その規模の大きさに改めて驚く。

 導水事業は、霞ケ浦の浄化や首都圏の水不足に備えようと1984年に着工した。裁判で漁協側は「国の需要予測は過大」と主張しているが、見学者向けのPR映像は、こう強調した。

 「霞ケ浦周辺や那珂川下流部は今後も人口増など発展が見込まれ、水道や工業用水の確保が必要です」

 次は車で10分ほど離れた桜機場(同市河和田町)へ。地下50メートルにある那珂導水路へ接続する立て坑の内壁をスクリーンに見立て、職員が映像で那珂川水系の魚類などを説明する。漁協側が懸念する「生態系への影響」に言及はなかった。

 ■既に1500億円■

 見学会は募集開始後すぐに25人の定員が埋まったという。参加した茨城県桜川市、農業男性(69)は、導水路を見て「あんな深い場所に穴を掘ったんだなぁ」と感心。事業は那珂川の支流の桜川や千波湖(いずれも水戸市)の浄化も目的とされるが、同県那珂市、会社員男性(65)は「どちらも地元民の憩い。きれいになってほしい」と話した。

 一方で、漁業関係者の反対は根強い。一審の水戸地裁では国側が勝訴したが、「取水口に魚が迷い込む恐れがあり、対策が不十分」と不信感を抱き続ける。

 取水口は建設途中の状態のまま、那珂川沿いの土手に一部をさらしていた。裁判の結果、建設は再開されるのか、それとも取り壊されることになるのか。投入された事業費は既に約1510億円に上っている。